産業用「ヒューマノイドロボット」が工場や物流現場で実用段階へ
もちろん、ロボットに感情があるわけではないが、人とのインタラクションを考えれば、相手に顔がないよりは、にっこりと微笑みかけてくれるほうが親近感もあり、コミュニケーションも円滑になるはずだ。Amecaは現在、表情や視線などに重点を置いて開発が続けられている。腕などを備えたバージョンも以前は公開されていたが、いまは胸像のような状態だ。 なお、Engineered Artsは最近、女性顔のAmecaのパートナーとなる男性顔のAziを開発した、そしてこの2体を並べて、夫婦漫才的なやり取りをするようすを公開している。
Clone Robotics『Torso』 ポーランドのスタートアップ・ロボティクス企業Clone Roboticsは先日、真っ白な姿がSFドラマ『ウエストワールド』に出てくる、ホストと呼ばれるロボットを彷彿するヒューマノイドTorsoを公開した。 Torsoの大きな特徴は、その運動機能のしくみを人間の生物学的な構造の模倣によって構築しているところだ。人間のような背骨と骨盤にしっかりとした胸郭、さらに腕や頭部が取り付けられており、それらは電動ポンプと弁を使ったハイドロリックシステム(液体圧)による人工筋肉および腱によって稼働する。
これはこの記事で紹介してきた他のヒューマノイドとは根本的に異なる手法だが、完成度を高めていけば、最終的に人間と同等の動きや繊細な動作ができるようになると考えられる。 アパレル業界などで衣類のディスプレイに使われるトルソーは胴体だけだが、このTorsoには頭部や腕も装備されている。ただ、腕の開発はまだ十分ではなく「両手を動かすトレーニングは進行中だ」とClone Roboticsは述べている。 ■人の役に立つヒューマノイドを目指して
近年のヒューマノイドはただ姿を人間に似せて動くだけのものではなく、その動作・インタラクションの仕組みも人間に近くなるように開発されている。このような手法により、ヒューマノイドは産業用として、人間には危険だったり、負荷の大きな労働を肩代わりしたりするだけでなく、家事をこなすなど人々の日常生活におけるサービスを提供するためにも使うことが可能になりつつある。 特に人工知能システムの統合は、ヒューマノイド開発の方向性を大きく変える出来事になるかもしれない。ヒューマノイドに搭載された高度なAI技術が人の言葉や命令を解釈し、それを仕事の指示に変換して作業を開始するといったことも可能になりつつある。
すでにヒューマノイドは産業、医療や教育からエンターテインメントまで、さまざまな分野で活用され始めている。今後も、技術の進歩やニーズの進化に伴い、ヒューマノイドの役割や用途は広がっていくはずだ。
タニグチ ムネノリ :ウェブライター