今井悠介×増村莉子×岩本菜々「令和の大学生のリアル」
格差是正の実践
――コロナ禍はいわゆるエッセンシャルワーカーや、飲食業やサービス業に従事する人々を苦境に追い込みましたが、学生たちの生活も一変させました。勉学だけでなく、サークル活動やアルバイトなどで得られたはずのさまざまな体験の機会が失われたことが、キャリアや個人の成長にどのような影響を及ぼすのかは、かなりの年数が経たないと見えてこないのかもしれません。 本日は学生を支援する活動をなさっている方々にお集まりいただきました。まずはお三方の活動の内容から教えてください。 今井》私が代表理事を務めるチャンス・フォー・チルドレン(CFC)は、子どもたちの貧困と教育格差の是正に取り組んでいます。1995年の阪神・淡路大震災で被災した子どもたちの支援を行ってきた特定非営利活動法人(NPO法人)の一つのプロジェクトとして発足し、東日本大震災を機に一般社団法人として独立しました。私自身も小学2年生で阪神・淡路大震災を経験していまして、その縁で大学生の時にそのNPOに参加して以来、不登校児童の支援に携わっています。 CFCの活動では、寄付金を原資に「スタディクーポン」を提供し、十分な教育を受けることが難しい状況に置かれた子どもたちが塾などの学校外教育を受けられるスキームを作りました。クーポンは地域の4500以上の教室や団体で利用でき、学習だけでなく、スポーツや文化事業、体験活動に参加することもできます。また、大学生ボランティアの「ブラザー・シスター」が、定期的な面談を行って、安心してクーポンを利用できるようにサポートしています。もともと学生ボランティアで始まった団体ですので、お二方が所属されている団体の活動にも非常に共感と尊敬の念を抱いています。 岩本》私たちPOSSEは、若者自身によって若者の貧困や労働問題を解決することを目指して2006年に発足したNPO法人です。具体的には、10代から30代の若者に対して労働相談や、調査・研究活動などを、約40~50人のスタッフで行っています。年間に5000件ほどの相談を受けており、移民労働者や女性、LGBTQなどマイノリティとされる人々の労働条件の改善、保育士や教員などエッセンシャルワーカーの労働問題にも取り組んでいます。 私自身は主に若者の貧困にフォーカスした活動を行っています。先ほどお話のあったコロナ禍で、非正規雇用者が軒並み解雇されるなど、日本で大変なことが起きてしまっていることにショックを受けてPOSSEに入りました。その後、日本学生支援機構(JASSO、旧日本育英会)から借りた奨学金を返せない低所得の若者が急増している問題に気がつき、2年前に「奨学金帳消しプロジェクト」を立ち上げて、相談支援や実態調査、政策提言などを行っています。