藤原季節が語る「俳優という仕事」 「演じているときだけ本当の自分をさらけ出せる」
藤原:繰り返し念入りにやりました。カメラが回った瞬間に表出してくる生の感情が良いっていうのも分かるんですけど、そこで何を大切にしなきゃいけないかは脚本の中に書かれていると思っていて。脚本をどれだけ深く読解できるかっていうのが一番大切なことだと僕は思っています。その作業を自分一人じゃなくて、ほかのキャストや監督とできるのは、僕にとってめちゃくちゃありがたいことでしたね。本読みでディスカッションをして準備を重ねておいて、現場に入った時に生の感情で初めて勝負するようにしていました。
――脚本を読むときに大切にしていることはありますか?
藤原:まず、最初は観客として読みます。子供が初めてお話を読んでるときのような純粋な気持ちで読むことを意識していますが、それ以外だと、いろんな人間になりきって声を出してみたりもしていますね。
――例えばどんな感じで?
藤原:いろんな映画で役者が演じている登場人物になって読んでみたりするんです。例えばアル・パチーノさんとか森山未來さんが演じているようにやってみたり、とか。そうすることで、何か新しい視点が見つからないか探ってみたりしています。
――そういうことができるのは、日頃、映画や舞台を通じて役者の演技をシビアに見てるってことですよね。
藤原:というよりは、もともとモノマネが大好きなんです。「ジョーカー」を演じているホアキン・フェニックスとか、役者さんの台詞の言い回しとかを真似して脚本を読んでみる。そこで発見したものを演技に取り入れたりもしています。
――今回、個性的な共演者が多かったのでかなり刺激を受けられたのでは?
藤原:もう、刺激しかなかったですね。これだけの映画人の方々に囲まれてお芝居をさせていただけるというのは夢のような時間で。毎晩、渋川清彦さんや渡辺真起子さんと映画の話をたくさんして本当幸せでしたね。
――渋川さんとの共演シーンはヒリヒリしました。
藤原:渋川さんと演技していると、ロックが頭の中に流れるんですよ。これが不思議で。あるシーンで共演したときは、「フィッシュストーリー」という映画に出てくる「逆鱗」っていうバンドの曲が頭の中に流れて。なんでだろう?と思って部屋に戻って「フィッシュストーリー」のことを調べたら、なんと逆鱗でドラムを叩いているのが渋川さんだったんです(笑)。それを知って、めっちゃ興奮しました。記憶の点と点がバン!ってつながって、めちゃくちゃヒリヒリする瞬間でしたね。