藤原季節が語る「俳優という仕事」 「演じているときだけ本当の自分をさらけ出せる」
何者かを演じることで仮面を取ることができる
――驚きですね! 今回の物語は極限状態に置かれた人々を描いていますが、ホテルで展開していく人間関係をどんなふうに思われました?
藤原:こういうどこかに閉じ込められるドラマって、登場人物たちがどんどん追い詰められて、殺し合いが起こったりすることが多いじゃないですか。狂気に走っていくというか。でも、この物語では牧雄一郎が秩序を提案して、争いなく生きていこうとする。そして、自分たちがいる世界を良くしようとしているうちに、破滅に向かっている外の世界のことにだんだん無関心になっていく。そういうところが今っぽいと思いました。
――みんな社会でうまくやっていけなかった人たちだから、相手を押しのけようとする悪意は持っていない。だからこそ、奇妙な共同生活が成り立つのかもしれませんね。
藤原:そうですね。ホテルに残された人たちって、今まで生きていた世界が嫌で仕方なくホテルに来た人ばかりじゃないですか。でも、謎の巨大生物が発生したことによって、自分が関わった社会や自分の知り合いとの関係が途切れてしまう。そこで彼らは自分自身に立ち戻って、自分が何のために生きているのか、何がしたかったのかを改めて考えて生きることを選択する。そういうところはピュアだと思いますね。
――そんな中で牧は小説を書き始めます。
藤原:世界が終わるかもしれない。食料がいつかは尽きることが分かっているのに小説を書く。欲望の一番深いところに「物語を書きたい!」という気持ちがあるのが、めちゃくちゃ素敵だと思いました。じゃあ、自分が同じ状況にいたら、一人芝居を始めるのかなって考えたりしますよね。みんなこれまで苦しい思いをして生きてきたから、リセットできる機会を得た時に自分がなりたいものになろうとする。前向きに未来に向き合おうとするんでしょうね。それが素晴らしいと思いました。
――自分のなりたいものになろうとする、というのは、何かを演じる、ということでもありますよね。それは役者が役を演じることと近いと思われますか?