J1昇格POでの涙に奮起誓った仙台・森山監督、場外声援のサポーターにも感謝「自分の娘がビデオを作っているのも見て…」
[12.7 J1昇格プレーオフ決勝 岡山 2-0 仙台 Cスタ] 昨季J2リーグ16位からの立て直しを託され、就任1年目でベガルタ仙台をJ1昇格争いに導いた森山佳郎監督だったが、最後はJ1昇格にあと一歩届かなかった。かつて2000年代に広島ユースで一時代を築き、15年以降はU-17日本代表の監督としてMF久保建英らとともに世界舞台に挑んだ名将は「一言で総括すると、J1に上がる力はまだまだ足りなかったということ」と率直に負けを受け止め、来季の奮起を誓った。 【動画】アウェー中国戦の裏で起きていた珍事…日本代表FWがSNS上の声に反応「わざと」 4年ぶりのJ1復帰をかけて臨んだJ1昇格プレーオフ決勝は今季2戦2敗の岡山に屈した。3バックの堅守をベースに迫力のある攻撃を仕掛けてくる岡山に対し、サイド攻撃とカウンターに活路を見出したが、前半は要所でのミスが頻発。後半はFWオナイウ情滋の投入で何度か決定機につなげたが、「失点数が一番少ない岡山さんは守らせたら天下一品。崩すクオリティーと迫力が足りなかった」(森山監督)という結末に終わった。 交代選手のクオリティーも含め、選手層の違いが際立った一戦。試合後会見、森山監督は真摯に現実と向き合い、奮起を誓った。 「僕らは去年の16位で、特に後半戦は22チーム中21位という成績で、どんどん落ちていた中で、今年スタートから『去年は足りなかったよね、今年やろうぜ』ということでみんな乗っかってきてくれて、6位ギリギリでプレーオフに滑り込みというところでは計画どおり、目標通りだったと思う。目標はJ1昇格と言いながらも、やはりたどり着けるとこはプレーオフ。(長崎との)1戦目は爆発力で勝てたけれど、J1に上がるまでの力は足りなかった。地力が足りない中、J2で6位なのでそのまま上がっても厳しかったと思う。もう一回、しっかりと地力をつけて、上がった時にJ1で残っていけるようなチームをもう一回作れたらと思います」 「選手に関しては残るとか残らないも出てくるでしょうし、実際に残ったメンバーと新しく入ったメンバーで新たなスタートにならざるを得ない。でも今日も岡山さんが喜ぶ姿を見ていた選手もいたけど、これを胸に刻んで。岡山さんも一昨年(のプレーオフで)悔しい思いをした選手が何人もいて、去年もエスパルスにいた竹内選手、神谷選手とか地獄のような悔しさを味わった選手がいた。木山監督に至っては5回目のチャレンジということで、やはりそういう悔しい思いをして、この試合にかける意気込みとか覚悟、そういうものが違ったなと。僕らももちろん相当持って挑んだが、まだまだ甘えぞということをガツンと殴られたような。こういう状況になって考えると、簡単に上がれるもんじゃねえだろと、そんなに甘くねえぞと今は思っています」 昨季の戦いぶりを受けて厳しい前評判で臨んだシーズンだったが、序盤戦10試合をわずか6失点で切り抜けるなど、堅守をベースに着実に勝ち点を獲得した今季の仙台。その後は得点数の増加と共に失点も増えたが、攻守のバランスを失う試合はほとんどなく、得点数50(リーグ9位)、失点数44(同8タイ)という内容以上の勝ち点を稼いできた。それでも「(積み上げの必要性は)全てと言えば全て」と指揮官が振り返ったように、下位相手に取りこぼさない上位勢との力の差は否めなかった。 「いろんな細かいスタッツはほぼ10位前後かもうちょっと後ろ。特に攻撃のチャンス構築率(リーグ16位)、得点期待値(同14位)は低く、低いのにここまで粘って粘ってやってきた。全てのスタッツが順位よりも下で、順位が一番上なくらい。そういう意味でスタッツはないけど、すごい粘って粘って勝ち点を積み上げてきたチームなので、守備のベースとかハードワークのベースはかなりできてきた。今年はスタートはそこだけくらいの感じで強化してきたので、来年はここをベースにして攻撃の構築をしたい。特に最後のボックスの局面の質とか強度を上げる取り組みを積み上げていけるかなと思っている」 そうしたひたむきな歩みはJ1昇格にこそつながらなかったが、チームを取り巻く空気を着実に変えた。J1昇格の希望が絶たれたプレーオフ決勝の敗戦後、サポーターは失意の中でも選手たちを拍手とチャントで迎え、来季への期待を呼びかける声が多数聞かれた光景は印象的だった。 岡山にはこの日、アウェーサポーター席が足りずにチケットを買えなかった100人以上の仙台サポーターも訪れ、スタジアム外で声援を送っていたが、森山監督は「チケット問題はどうにかしてほしい。もちろんチケットの数は限りはあるし、アウェーサポーターの枠も決まっていて、当然見られない人がいると思うけど、ダフ(屋)……やめとこうか(苦笑)」と言葉を濁しながらもチケット高額転売の問題に言及。その上で彼らの熱意に寄り添いながら感謝を口にした。 「僕の“目標1”はもちろんJ1昇格ではあるけど、それと同列で地域に信頼され、愛され、応援されるクラブになるというところ。そういう意味では地道にやってきたし、サポーターの皆さんに感謝。今回もいろんなことをやってもらって、たまたま自分の娘(森山あすかさん)がビデオを作っているのも見て、『こんなこともやってもらっているんだ』と。もちろんやっているのは聞いていたけど、実際に映像も見せてもらって、今回もこの試合に向けて“夜鍋会”みたいなので何日も集まって、何時間もやっているところも見せてもらって、本当に一緒に戦っているなというのを強く感じていた」 「僕自身は勝つだけでもなく、負けたらなんだお前らじゃなく、サポーターと一緒に呼吸しているじゃないけど、勝ったらお互い『ありがとう』って、負けたら『クソ、俺らも足りなかったな』ってそういう関係を作っていけたらなと。今年はブーイングが1回くらいあったけど、それ以外なかったのは多目に見てくれているところもあると思うけど、やっぱり選手が頑張っているということと、僕らもサポーターのみんながやっていることを理解して感謝して、それも選手もわかっているからありがとうって伝えているので、それが良い関係だなと。それに甘えるというわけじゃなく、一緒にチームを良くしていこうぜと。そういう関係でありたいなというのを僕は持っている」 「本当に僕はサポーター一人一人の音量、熱量は日本一じゃないかなと思っている。今日も人数は10分の1くらいだったと思うけど負けないくらいの音量で、この前の長崎もちょうど10分の1くらいだったけど、全く変わらないくらいのとてつもない応援をしてくれた。僕らもユアスタではサポーターの声でなんとか踏ん張れた、勝ち点を稼げた試合も多かった。本当に感謝しています。この負けでもね、ものすごく最後まで声援を送ってくれて、本当にありがたかったし、ここからまたサポーターの皆さんに喜んでもらえるようなクラブになりたいなと思います」 サポーターとの信頼関係も含め、強固な土台を作った就任1年目。「地方から都会の強いチームに噛み付くというコンセプトのところでも僕に一番合うような地域性」とあらためて“仙台愛”を口にした指揮官は、この悔しさを糧に来季への意気込みを語った。 「今回はトップ3に4勝1分1敗で、最後に(プレーオフ準決勝)長崎にも勝てて5勝1分1敗でそこ(強いチームに噛み付くこと)はできたけど、逆に勝てるでしょってチームに勝てなかったり、負けたり、攻撃では押し込んでボールを持つけど決め切れずにカウンターでやられるとか、そこは来年は改善していきたいですね。そこで決め切って、相手が攻めてくるところをもう1点というチームに成長させていきたいなと思います」