甲子園初、女子マネがノック 部員13人の城東、貢献の一心で手にマメ
第95回記念選抜高校野球大会は第5日の22日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場であり、2回戦の城東(徳島)―東海大菅生(東京)戦の試合前練習で、城東の女子マネジャーの永野悠菜さん(3年)がノックを打った。春夏の甲子園大会で女子マネジャーがノックを打つのは初めて。 試合前のノックが始まると、ユニホーム姿の永野さんは力強く一球一球、内野手に打球を飛ばした。冒頭の約1分半のノックを担当し、新治良佑監督にノッカーをバトンタッチすると、スタンドからは温かい拍手が送られた。 部員13人(選手12人)ながら21世紀枠で甲子園初出場を果たした城東は、県立進学校ゆえに部員不足が深刻だ。監督や部長が不在の時は、選手が満足にノックを受けられない。ノッカー役を務めた選手が「今日、一回もノックを受けられなかった」とこぼした一言を永野さんは聞き逃さなかった。 「打てる余裕があるのは私だけ」。ノックに挑戦する覚悟を決めた。中学時代は吹奏楽部で、運動は苦手。バットの握り方すら分からず、新聞紙を丸めたボールをバットに当てる練習から始めた。マネジャー業務の傍ら、手のひらにマメを作りながら特訓し、今ではポジションごとに打ち分けられるまでになった。 部活と勉強を両立させる努力も怠らない。平日は午前6時に登校して1時間を勉強に充て、午前7時からグラウンドに立ってノックを打つ。幼稚園からの幼なじみである森本凱斗主将(3年)が「支えてもらうだけでなく、自分たちもそれに応えないといけない」と語るように、ひたむきな姿は選手たちの背中を押している。 昨年12月、城東が21世紀枠の地区候補校に選出されて以降、ノックを打つ女子マネジャーとして注目された。インターネット上で「話題作りのためにやっているんだろ」などと心ない書き込みを目にし、涙したこともある。それでもチームの勝利に貢献したいという一心でバットを振り続けた。 「グラウンドに自分が立つ意味を考え、一球一球思いを込めて打ちたい」。13人が思いを一つにあこがれの舞台に立った。【下河辺果歩】