ツール・ド・フランス2024有力選手プレビュー|ビッグ4がマイヨ・ジョーヌ争いを先行する
レムコ・エヴェネプール
これまでの実績を考えると、ツールデビューが意外なレムコ。チームの育成方針からツールを回避し、グランツールはジロとブエルタに注力してきたが、満を持してツールに臨む時がやってきた。 こちらもイツリア・バスクカントリーで落車に見舞われ、鎖骨と肩甲骨を骨折。それでも早期の回復に成功し、ドーフィネで戦線に戻ってきた。肩回りの怪我によって、TTポジションの崩れを本人が心配していたが、ドーフィネでは個人TTステージを勝利。不安を解消し、ツールへ明るい材料としている。 そのドーフィネでは山岳で苦しむなど、ベストコンディションにはなかったが、ツール本番までに仕上げる見通しは立っている。特に今大会は2つの個人TTステージ合わせて59kmと、見せ場を作るチャンスは十分。あとは山岳での走りが安定してくれば、マイヨ・ジョーヌだって夢ではない。
ダークホース
ビッグ4の存在が非常に大きいものの、他の選手たちにもチャンスがないわけではない。実質の「第2グループ」からは誰が浮上してくるだろうか。その走りいかんでは、トップグループ4人に追いつき、追い越す可能性だってある。 その最右翼となりそうなのが、イネオス・グレナディアーズが誇る若きリーダー、カルロス・ロドリゲス(スペイン)。今季は4月にツール・ド・ロマンディを制し、先のドーフィネでは最終・第8ステージで勝利。シーズンを通して好調を維持する。前回大会ではステージ1勝を挙げ、最終的に個人総合5位。そのときを大きく上回る走りに期待がかかる。イネオス・グレナディアーズはエガン・ベルナル(コロンビア)もメンバー入りし、この両輪がチーム浮沈のカギを握ることとなる。 昨年個人総合4位のサイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー)は、4月下旬以降レースから離れ、ツールに向けた調整に集中。そのスケジューリングが吉と出るか。 ツール・ド・スイスでは負傷リタイアに終わったリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)は回復を急ぐ。前回は第1ステージで落車し、早々に大会を去っている。その雪辱を期して今年は上位進出を目指す。 スペイン勢では、上位常連のエンリク・マス(モビスター チーム)やペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)の名が挙がる。 そして、アウトサイダーとして押さえておきたいのは、ドーフィネで個人総合3位と大躍進したデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック、カナダ)。昨年のジロで再三再四逃げた姿に強いインパクトを残すが、初出場のツールを前に総合系ライダーとして覚醒した感がある。タイムトライアルを得意としているあたりもプラス要素で、本人も上位進出へ意欲的だ。 前記したヨルゲンソン、アダム、アルメイダ、アユソといった、ビッグチームの2番手・3番手の選手たちが絶対エースを押し上げながら、自身も上位へ…ということも大いにあるだろう。展開次第では、プランB・プランCとして総合エースに昇格する可能性もゼロではない。 なお、個人タイムトライアルステージをのぞく各ステージには、上位3選手にそれぞれ10秒・6秒・4秒のボーナスタイムが付与される。ステージによっては、コース途中に上位通過3人に8秒・5秒・2秒のボーナスも設けられ、これらが個人総合争いにかかわってくることも考えられる。