食に関心が高い3児の父、写真家・本城直季さんの台所。「東京の台所」連載300回記念
【&w連載】東京の台所2
〈住人プロフィール〉 46歳(写真家) 戸建て・5LDK・千葉県 入居10年・築年数約35年・妻(45歳・ギャラリーオーナー)、長女(10歳)、長男・次男(4歳双子)、義母(84歳)との6人暮らし 【画像】台所写真をもっと見る(18枚)
念願の台所訪問。食に関心が高い3児の父
「東京の台所」連載300回を記念して、写真家・本城直季さんの台所を訪ねた。氏は2020年4月より、連載の撮影を担当。プライベートでは、広く緑ゆたかな妻の実家で、3児の父として週3、4回料理を担当している。 もともと食材の安全性や栄養素に関心が高い。おいしいもの好きで、取材中も調味料や調理ツールに興味津々。楽しみながら撮っておられる姿を見るにつけ、いつかご自身の台所をお訪ねしたいという念願がかなった。 妻が子どもの頃から使うダイニングテーブル 妻が生まれ育った家に義母と6人で暮らす。敷地内にはこのほか母屋、義兄宅、アパート、駐車場がある。床と台所は、双子の誕生に合わせ、4年前にリフォーム。無垢(むく)の杉材の床は、自分たちで表面を削り、風合いを出した。妻が子どもの頃から使っているダイニングテーブルは、ゆったり6人が座れる。 北向きながら明るい台所 台所は北向きだが、前面窓と、奥に勝手口があり明るい。料理分担は、本城さんが火・木・金。妻が月・水。土・日は変則。双子は平日は保育園に通っている。食材は、スーパーの産直コーナーで買うことが多い。 サプリと家族の朝食専用の棚 上段と下段は家族のシリアル・パンなど朝食。中段はサプリ。本城さんは子どもの頃から胃腸が弱く、栄養素や健康に関心があったため、多様なサプリを試している。移住2年目から7年間糖質制限に挑戦。「目に見えて調子が良くなりましたが、炭水化物をちょっとでも食べるとてきめんに血糖値が上がって、体調が崩れる。これは一生続けられないと悟りました」。 毎日の習慣、食物繊維 さまざまなサプリを試してきたなかで、今も続いているひとつは「サンファイバー」(タイヨーラボ)。無味無臭で、コーヒーやヨーグルトなどに混ぜて毎日取っている。「豆から生まれた植物性繊維です。どんなにいいものを食べても、腸の状態が良くないとだめだなと気づき、今は発酵食品も含めて腸内環境を良くするものに着目しています」 納豆、自家製ヨーグルトは家族全員の好物 まさに本城家の<切らしたら困るもの>。納豆、自家製ヨーグルトは家族全員の好物。キムチなど発酵食品を意識して取るようになったのは35歳で結婚、千葉に移住してから。 朝食の定番 みんなの朝食の定番。大人は「フルーツ&ナッツクランチ」(アララ)で、妻は牛乳を、本城さんはヨーグルトをかけて食べる。子どもたちはオールブラン・ブランチョコフレーク(ケロッグ)や「ごろグラ チョコナッツ」(日清シスコ)にヨーグルト、はちみつをかける。 低温調理器で自家製ヨーグルトを 低温調理器。ヨーグルトを作っているところ。右の筒型の低温調理器を水を張った容器にセットすると、低い温度でじっくり加熱でき、肉や魚が柔らかく仕上がる。 義母から引き継いだ蒸し器 35歳で大学の同級生と結婚。共働きで子育てをするため、妻の両親の助けを借りたいと36歳で千葉へ転居。「その後残念ながらお義父さんが闘病を経て亡くなり、お義母さんが認知症に。双子の長男次男が遺伝性の疾患で入退院を繰り返し、なかなか思うようにはいきませんが、パパ友ママ友に恵まれて周囲に助けられながら、暮らしています」 この蒸し器は、妻の両親が使っていたもの。 「頑丈でたっぷり入って、蒸すだけでなく煮物にも使える。毎日使うので、シンクに出しっぱなしです。ブランド? うーんどこのだろう。とにかく我が家には欠かせない道具です」 今も捨てられない、スタイ 長男次男の離乳食時に使ったスタイ(よだれかけ)。成長した今は使っていないが、台所にまだ置いている。「0歳で病気になってから、とにかく食が細く食べられないので苦労して。“このまま食べられなかったら、胃に穴を開けて流動食になる”と言われ、なんとか自力で食べられるよう、あの手この手で柔らかな料理を作りました。ギリギリのところで頑張って胃の穴は免れたのでよかったです」 親子奮闘の日々の思い出がしみついたスタイは、今も捨てられない。 千葉は道の駅が充実 温暖な気候の千葉は、じつは芋、野菜、畜産など農作物の産出額が全国4位。本城さんも移住して初めて、農作物のおいしさ、食の恵みのゆたかさに驚いたそう。週末は、家族で道の駅で買い物も。都内では見られない巨大なズッキーニや生のまま食べられる甘いとうもろこしなどが安価に入手できる。 愛用の調味料 下総醤油(しょうゆ、ちば醤油)は、つくり手のわかるこだわりの食材がそろった五味商店で購入して以来愛用。別の醤油にすると子どもたちが「違うね」と気づく。味の母(味の一醸造)は、これ1本で料理酒とみりんが不要に。「甘みや旨味もあって、味も決まるしとにかく便利。料理酒を買わなくなりました」 新調したトースター パナソニックのトースターを最近新調。前も同じブランドで、10年使った。最新式は、電源を入れると庫内が驚くほど明るく照らされる。 料理道具を上質なものを 妻と一緒に買ったストウブの鍋。「独身時代から道具はこだわっていて、高くても思い切っていいものを買う方でした」。 ふだんの「東京の台所2」取材時も、炭酸メーカーや電化製品、調理器具に詳しく、新しいものを見かけると本城さんが住人に質問することも。写真家はカメラ機材にこだわるものだが、ひょっとしたら料理も同様かも!? 毎年、味噌を手作り 味噌(みそ)の手作り歴は数年。階段下の収納スペースに置いている。 毎週末、近所の公園でピクニックを楽しむ 周囲にたくさん公園があるので毎週末、家族でピクニックをしている。妻がお弁当を詰めるランチボックス。 日常使いのマグカップ 左のカップは20年ほど前、撮影で行ったハワイで買った自分用。アメリカンサイズで気に入っている。右は義母が陶芸教室で昔作ったらしいコーヒーカップ。戸棚の奥から見つけ、素敵だったので毎日使っている。「らしい」というのは、認知症の今、確認できないため。 五島列島の塩 生活協同組合我孫子生活センターで購入するごとうの塩。五島列島の「五島塩の会」が作っている。子どもたちも好きで、蒸し野菜などは塩のみで食べる。 米は新潟から取り寄せ 米は新潟から取り寄せている。スタジオをシェアしている大学時代からの友人の実家のもの。義兄家族との2家族分で、1回に30キロ購入。メルカリで購入した農家のもち麦を混ぜて炊いている。 ■著者プロフィール 大平一枝 文筆家 長野県生まれ。市井の生活者を独自の目線で描くルポルタージュコラム多数。著書に『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『人生フルーツサンド』(大和書房)、『注文に時間がかかるカフェ』(ポプラ社)など。本連載は、書き下ろしを加えた『東京の台所』『男と女の台所』(平凡社)、『それでも食べて生きてゆく 東京の台所』(毎日新聞出版)の3冊が書籍化されている。
朝日新聞社