「青木さんみたいな人になれるように」若手に慕われるヤクルト“将来の監督”候補 背番号「23」が託したレガシー
ヤクルトの青木宣親が21年間の現役生活に別れを告げる。10月2日、神宮球場で行われる広島戦が青木の引退試合となる。ファンだけでなく、青木を慕う若手選手も万感の思いでこの試合を見つめるはずだ。 【動画】笑顔のベテラン!青木宣親が逆転のタイムリーを放つ 9月29日の巨人戦(神宮)でサヨナラ適時打を放ってお立ち台に上がった長岡秀樹は、「ノリさんと一緒にユニフォームを着て選手としてプレーするのは、次の試合で最後ですけど、すごくお世話になった先輩ですし、成長した姿を少しでもお見せできるように頑張りたい」と、力強く誓った。 長岡は、オフに青木が村上宗隆ら数人の若手を引き連れて自主トレを行う「チーム青木」のメンバーのひとり。今季はここまで159安打を放ち、阪神の近本光司らと最多安打争いを繰り広げるまでに打撃が成長した。 青木の“指導”は自主トレ組だけにとどまらない。今季、育成から支配下契約を勝ち取った3年目の岩田幸宏は、青木に「手先と足先だけで野球をやっている」と指摘された。「身体の使い方」について学び、「胴体とかうまく使えるようになれば、もっとやりたいこと、自分の想像していることが体現できる」と言われたという。 股関節の可動域を広げ、出力をうまく出せるようにすることで、走攻守すべての面でプラスに働くようになる。そんな意識の変化が生まれたことで、青木から「ちょっとずつ良くなっている」という言葉をもらえた。 若手にとって目から鱗が落ちるようなアドバイスを送れるのは、これまで自身が培ってきた経験があるからだ。 岩田はそんな先輩と「もう少し一緒にやりたかった」と話す。「いろいろ聞きたいですし、間近で見て勉強になりますし、もっと学びたかった」と、寂しそうな表情を浮かべていた。 2年目の澤井廉は青木について「子どもの頃から見ていた選手。あの頃活躍していた選手が同じチームになってご指導いただいていて、引退されるというのは考えさせられる」と、感慨深い様子だった。「自分の身体の動きとかバッティングでもいろいろアドバイスをいただいて、しっかりメモにして困ったときは見返している」と明かした。 将来の主軸候補でもある澤井。プロ1年目はイースタンリーグで18本塁打を放って本塁打王に輝き、今季は1軍でプロ初アーチも放った。来季は1軍でさらなる活躍が期待されている。 そして、今年1月の宮崎自主トレで初めて「チーム青木」に加わった並木秀尊は、青木から自主トレ先で「お前ら若い奴らが引っ張っていかなければいけない」と、熱い思いを打ち明けられた。 並木はその言葉を受け「若い人たちで何とか引っ張っていくのもそうですし、青木さんみたいな人になれるように、ちょっとでも近づけるようにやっていきたい」と、これからは自分たち若手がチームを引っ張り、その偉大な存在に少しでも近づきたいという思いを強くした。 背番号「23」は本拠地の神宮で現役最後のユニフォーム姿を披露するが、そのレガシーは多くの若手に引き継がれる。 引退会見で青木は将来「監督」をやってみたいという思いも口にしていた。多くのファンがそのときを待ち望んでいるに違いない。いまはその日を夢見て、10月2日は“バットマン”として最後の青木宣親を、目に焼きつけておきたい。 [文:別府勉]