「宇宙に広がるインターネット市場」 Interop Tokyo 2024 特別企画 「Internet x Space Summit」が開催
開催に先立ちJAXA金子氏×慶應大 神武教授が見所を紹介
株式会社ナノオプト・メディアが運営する国内最大級のインターネットテクノロジーイベント 「Interop Tokyo 2024」が2024年6月12日(水)~14日(金)に幕張メッセで開催される。Interop Tokyo 2024のメインテーマは、“AI社会とインターネット”であることは、FINDERSでもお伝えしたが、昨今ますます注目を集める“宇宙ビジネス”をテーマとした 「Internet x Space Summit」 が昨年に続き今年も特別企画として行われることになった。 宇宙とインターネットテクノロジーの組み合わせには、地表へのインターネットサービス提供のみならず、未来に向けた多くの可能性が秘められている。そして近年、この分野では数多くの政府機関、学会、民間において様々な取り組みや検討が急速に進み、将来的には、インターネットが地球を超え、惑星間や宇宙を網羅するインフラに成長することで、新たな産業やビジネスチャンスが生まれることが期待されている。 こうした背景から、Interop Tokyo では「Internet x Space Summit」を特別企画として実施し、インターネットが宇宙空間に広がることで生まれる可能性を探ることとなった。そして本企画の実施にあたり、仕掛け人であるJAXA金子洋介氏と、慶應義塾大学 神武直彦教授による対談が公開され、本企画の見どころなどが紹介されている。本記事では、この対談の様子を中心に、宇宙ビジネスにおけるインターネットテクノロジーについての現状や、注目すべきトピックスなどをお伝えしたい。
惑星間ネットワークを構築し、宇宙でも地球上と同じようにインターネットが使える環境を !
神武 : 金子さんご所属のJAXAというと、ロケットとか人工衛星とか宇宙ステーションというイメージがあると思うのですが、その中でインターネットの取り組みはどのようなことをやられているのですか? 金子 : 最近、アルテミス計画など国際的な月探査への動きが非常に活発化しており、月での持続的な活動を行うためにさまざまな研究が行われています。そうした中、通信インフラは非常に重要となっており、この通信のインフラのことを “惑星間インターネット” という言葉で表現したりしています。これはJAXAの外での活動にはなりますが、アメリカのIPNSIG(https://www.ipnsig.org/)というNPO団体に参加して、惑星間のインターネットをどうやって作り上げるべきか、あるいはそれを作るためにはどういう課題があるかといった議論もしています。 神武 : 惑星に行っても日本や地球上と同じようにインターネットを使えるようにする、というのがひとつのゴールですね。 金子 : そうですね。やはり月面で人が活動するためには、建物をつくる建築の技術や、発電するためのエネルギー技術、食料を生産する技術も必要です。そしてこれらのすべての技術を支えているのが通信だと思うのですが、これまでのJAXAですと、ミッションをクリアするためのポイント・ツー・ポイント通信が主でしたので、このマインドを進化させ、ネットワークという概念で取り組まないと、通信インフラとしての構築は難しいと感じています。 神武 : 今回の特別企画 「Internet x Space Summit」 では、そのあたりがホットトピックスになると思うのですが、金子さんはどのような未来をイメージされていて、今回の企画ではどのような方々に登場いただくのですか? 金子 : 私が究極的に目指したいのは、地球と月、そして将来火星というものがひとつのネットワーク、共通インフラのもとでつながる。例えば、月面の基地だったり、火星の基地だったり、あるいは月の周りを回る衛星だったりが、ひとつのネットワーク基盤につながる状態を目指したいと思っています。 神武 : そういったネットワーク基盤をつくる上での課題は何ですか? 金子 : やっぱり非常に遠いことですね。電波を地球から発して火星にたどり着くのに、火星が一番遠い時間だと、20分ぐらいかかってしまいます。例えば宇宙飛行士やロボットが火星の表面で何か活動している時に、何か指令を送るにしても、20分で行って20分で帰ってくるという非常に遅延が大きい環境になってしまいます。さらに月や人工衛星も惑星運動により常に回り続けているので、衛星が天体の裏に入ってしまったりすると、さっきまで通信できていたものがいきなりプツッと切れてしまうといった、地球上とは違った遅延や切断が起こるため、こうした宇宙の環境に対応できる技術、通信プロトコルの開発が重要だと思います。 神武 : そのあたりの研究はどのように進められているのですか? 金子 : 結構歴史は長くてですね。私が所属するIPNSIGを立ち上げたヴィントン・サーフという、インターネットの根幹を成しているTCP/IPという通信プロトコルを開発された方が、これから人類が宇宙に出ていく時にTCP/IPだと立ち打ちできないということに気付き、DTNという通信プロトコルの研究を1998年から行っていて、今ではNASAやJAXA、ヨーロッパのISAなどが中心となって研究を進めています。
【関連記事】
- いよいよ開催まで1ヶ月!「INTEROP TOKYO 2024」 “AI社会とインターネット”をメインテーマに最新のインターネットテクノロジーが集結!!
- 深圳を拠点に活動する高須正和が、 Interop Tokyo 2024 で基調講演に登場! 中国におけるオープンソース最新動向を紹介
- 映像制作の現場も“AI技術”がトレンドになりつつある?! 映像業界の最新情報を紹介する 「AFTER BEAT 2024」開催レポート
- 2023年以降インターネット業界はもう“裏方”じゃいられない Interop Tokyo 30回特別企画(3)|村井純・慶應義塾大学教授
- 「Interopはインターネットの未来を先取りしている」Interop Tokyo 30回特別企画(1)|中村修・慶應義塾大学教授