元SMAP「森且行」日本一の称号を手にした82日後にケガ「下半身の50%に感覚がない」
「やっとオートレーサーとしての一歩を刻めた!」 その瞬間、胸に込み上げた感情は、長年の努力がすべて報われたように感じられた。 しかし、これが森の挑戦の本当の始まりにすぎなかった。 元アイドルという肩書は重くのしかかり、観客席からは冷たいヤジが飛び交い、その一言一言が胸に鋭く突き刺さる。 「『死ね!』なんて言われたこともありましたよ。みんな、アイドルが遊び半分で来たと思ってたんでしょうね」 その言葉は痛烈だったが、森は「速くなること、それだけが自分のすべてだ」と信じて全力で走り続けた。少しずつ努力は実を結び、G1やG2のタイトルを手にする頃には、周囲の反応も変わっていった。
「新人王を取った頃から、ヤジも少なくなっていった」。それでも、心はまだ満たされていなかった。 「SGを取らなければ、本当の意味で認められない」――そう自らに言い聞かせ、さらに高みを目指した。 しかし、20年以上もの間、その目標に手が届くことはなかった。焦りが胸を締め付ける。 「自分には本当に日本一になれる力があるのだろうか?」 森は自問し続けた。どれだけ努力しても、その問いが心を静かにむしばんでいった。
■新しい地図の3人が森を奮い立たせた そんな森に訪れた転機。それは、「新しい地図」の3人がABEMAの番組で浜松のレース場を訪れてくれたときだった。SMAPが解散し、それぞれが新しい道を歩み始めた彼らの姿を目の当たりにし、森の心は深く揺さぶられた。 「3人が来てくれたことが、自分にとって大きなきっかけでした。もし彼らが来なかったら、今の自分はいなかっただろうし、考え方も全然違っていた。『もう一度、踏ん張ってみよう』と思えたのは、間違いなく彼らのおかげです」
その瞬間、森の中で止まっていた何かが再び動き出した。仲間たちはSMAPで日本一を手にしていたが、森だけはまだその夢をつかめていなかった。 「自分も日本一をつかみたい」 それは、SMAPの仲間たちと交わした約束であり、森が走り続ける理由そのものだった。 そして迎えた2020年11月3日。オートレース日本選手権の優勝戦――森にとってキャリア最大の瞬間が迫っていた。スタートの合図が鳴り響き、彼は全力でアクセルをひねった。