音楽活動を反対された[Alexandros]川上洋平さん 「親は最初の壁になればいい」
穏やかな雰囲気の地元が好き
――24年10月には、バンド主催で野外フェス「[Alexandros] presents THIS FES ’24 in Sagamihara」を行います。川上さんの地元、相模原で行われる本格的なフェスですね。 数年前に相模原市が発行しているフリーペーパーの取材を受けたとき、市役所の方が「相模原でフェスをやってほしいです」と言ってくれました。そのときは「やってみたいけど、今はそんな余裕はないな」と思いましたが、去年、話が具体的になってきて。相模原には実家があるので、今もよく帰るところです。もし自分たちが地元を盛り上げられる立場にいるのだとしたら、お力添えしたいという気持ちもありました。 ――相模原の好きなところは、どんなところですか。 相模原は、1時間あれば温泉地にも行けるし、都会にも出られます。そういうニュートラルなところが、相模原の人たちの穏やかな雰囲気につながっているのかもしれないですね。僕は子どもの頃に父親の仕事の関係でシリアに行ったので、ちょっと違うのかな。ずっと相模原市にいたら、どんな性格になっただろうと思うこともあります。 ――相模原のフェスもそうですが、川上さんのキャリアは「音楽という夢をかなえる」という軸がしっかりあります。今の高校生、大学生のなかには、「自分の軸とするもの、目標にするものが見つからない」という人も少なくありません。 僕はラッキーなんですよ。小学生の頃から音楽が好きで、おぼろげながら「これを仕事にしたい」と思っていました。ただ、やりたいことは見つけようとして見つかるものではない気がしています。これも就職していたときに感じたことですが、とりあえず好きなものがあればいいと思うんです。たとえば、「好きなアイドルを追いかけたい」でも、「プラモデルを集めて作っていたい」でもいい。それを仕事に結びつけることはできなくても、「好きなことをやるために仕事を頑張る」というのもカッコいいじゃないですか。 ――「好き」という思いの種を育てることも大事なのかもしれないですね。 自分のことで言えば、洋楽を好きになったことが大きかったです。シリアにいた頃はヨーロッパのMTVを見ていましたが、アメリカやイギリスだけではなく、インドやフランスの音楽がどんどん入ってきて、音楽の可能性をすごく感じました。当時はオアシス(イギリスのロックバンド)がアメリカに進出していた時期で、「もしかしたら日本からも世界に出られるんじゃないか」とワクワクしました。 つまり海外の音楽を知ることで、自分のなかでいろんな発見があったんです。だから、とりあえず海外に行ってみるのもいいと思います。しばらく暮らせば言葉を話せるようになるだろうし、恋人ができるかもしれない(笑)。そのなかで日本では見つからなかった「好きなこと」「やりたいこと」に気づくかもしれません。 ――大学選びに悩んでいる高校生にアドバイスはありますか。 できるだけレベルが高いところを目指してほしいです。自分のマックスのちょっと上くらいを狙って、ちょっと背伸びするほうがいいんじゃないかと思います。限界を超えようとすることが、力になる。やっぱり環境って大事だと思うんです。そのなかで得られることも変わってくるし、「もっと頑張らなくちゃ」という気持ちにもなります。学生であれば、自分よりもできる人たちと一緒に勉強したり生活したりすることで、レベルアップにつながると思います。 ――中高校生の子どもを持つ保護者へのアドバイスはありますか。 最初の「壁」になってあげられるのが親だと思うんです。お子さんが何かをやりたいと言い出したときに、「無理だからやめたほうがいい」と思えば、そう言ってあげればいい。もちろん手助けするのも正解だし、大事なのは自分の意見をはっきり伝えることじゃないかなと思います。 僕の親も、音楽活動にずっと反対していました。親の気持ちもよくわかっていたので、会社を辞めてバンドでデビューしてからも、しばらく内緒にしていました。報告したのは、本当に音楽活動だけで生活できるメドが立ってからです。それまではスーツを着て会社に行くふりをして家を出ていました。 両親から反対されたことは、逆に「やってやる」という気持ちになりました。厳しいかもしれないですが、「反対されたから辞める」というのであれば、その程度なのだと思います。社会に出たらもっと大変なことがあるし、反対する親を説得して見返すくらいのパワーがないとやっていけないと思います。僕の親も、初の武道館ライブの頃から応援してくれるようになりました。ただ、「お前のバンドは紅白には出られないだろうな」と言われたことがずっと心に残っていて悔しいので、親が元気なうちに、NHK紅白歌合戦に出たいと思っています(笑)。それがいまの僕の目標ですね。 [Alexandros] 川上洋平/1982年、神奈川県生まれ。ロックバンド[Alexandros]のボーカリスト兼ギタリスト。9歳から14歳までシリアで過ごした経験を持つ。2007年、青山学院大学法学部卒業。24年9月18日ニューシングル「SINGLE 2」が発売。 (文=森 朋之 撮影=今村拓馬 ヘアメイク=坂手マキ(vicca))
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