がんや終末期だけではない「緩和ケア」、早期導入で苦痛を予防し過剰医療を減らす、患者・家族に信頼される「かかりつけ医機能」の拡充を
緩和ケアチームと家庭医
上記の『がん情報サービス』の資料に掲載されている図2(下記図)には、緩和ケアに携わるさまざまな専門職からなるチーム(緩和ケアチーム)の例が描かれている。 そこでは、ケアマネジャー、ソーシャルワーカー、管理栄養士、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士が含まれている。そして、その医師の説明には、「がんの治療を行う担当の医師や、体のつらさの緩和を専門とする医師、気持ちのつらさの緩和を専門とする医師が対応します」と書かれている。 日本では、家庭医・総合診療専門医がカバーできる診療範囲について一般にまだよく知られていないので無理もないが、実は私たちが緩和ケアに関わることは少なくない。
がんの治療はA科のB医師、身体的症状はC科のD医師、そして精神的症状はE科のF医師、などと患者を問題ごとに分断するのではなく、がんや生命を脅かす疾患にかかる以前からその患者と家族のことを知っている家庭医とそのチーム(プライマリ・ヘルス・ケアチーム)が継続して関わることのメリットは大きい。もちろん、必要に応じてそれぞれのがんケアの専門家と相談し連携することも家庭医の機能に含まれる。 緩和ケアが行われるのは、ホスピスや病院の緩和ケア病棟などの入院・入所が前提の医療施設に限定されるものではない。診療所などの外来診療でも提供可能だし、在宅ケアや介護施設でのケアもある。それが必要な時に、必要なケアチームと分担または共同して、必要なだけ、適切な場所で行う。 いろいろな点でシームレスに関わることができるのが家庭医のアドバンデージである。利用する患者・家族から見れば「便利」ということだ。 かつて「ホスピスは建物ではない、哲学である」と言った人がいた。「哲学」とまで大上段に構えなくても、家庭医は患者・家族の意向と必要性に応じて柔軟に、実際的な対応ができるように心がけている。