がんや終末期だけではない「緩和ケア」、早期導入で苦痛を予防し過剰医療を減らす、患者・家族に信頼される「かかりつけ医機能」の拡充を
信頼される制度設計が必要
こうした制度設計は、日本に標準的な専門研修を修了した家庭医・総合診療専門医が十分増えるまでの移行期においては必要な制度と言えるが、例えば、緩和ケアが必要になった患者と家族の目線で見た場合、このような曖昧さで報告された「かかりつけ医機能」が頼りがいのあるものとして映る可能性は低いだろう。結局、どの医療施設で相談したら良いか、迷ってしまうに違いない。 ただ、この分科会の報告書では「2040年頃までを視野に入れた人口動態・医療需要」として「自宅や高齢者施設を含め、看取り・ターミナルケアを行う機能」を確保することが一層重要となるのはないか、という議論は報告書に記録されているので、さまざまな専門職からなるチームと連携して緩和ケアができることも「かかりつけ医機能」に含まれるよう検討してほしい。 もちろん、高齢者の看取り・ターミナルケアだけが緩和ケアではないことの理解も進んでほしい。 「お兄さんと兄嫁さんは『緩和ケア』科の医師の診察を受けることをどう思っているんでしょうね」 「あ、『まずは今の気持ちを聴いてあげること』、家庭医の教訓ですね」 「覚えていてくれて嬉しいです(笑)。『緩和ケア』科の医師がお兄さんのかかりつけ医ともしっかり連携してくれると良いですね」
葛西龍樹