ウクライナ軍の新編機械化旅団、装備は60年前の車両か ロシアを笑えぬ窮状
昨年秋、ちょうどロシア軍がウクライナ東部で現在まで続く直近の攻勢を始めつつあった頃、ウクライナ陸軍は計11個の新たな旅団のうち最初の旅団の編成に着手した。150~160番台のこれらの新編旅団によって、ウクライナ軍の地上兵力は10%拡大することになる。 机上では、これらの新編旅団は半年程度の訓練を施したあと、ロシアによる対ウクライナ全面戦争の1000kmにおよぶ戦線のどこかに投入することが想定されている。激戦が続く東部の防衛や、より戦線が安定した南部の防御線保持、あるいは北部や国境をまたいだロシア側での攻撃などが任務になる。 だが現実はというと、これらの旅団は現代的な兵器が絶望的なまでに不足している。これは、ウクライナ軍がローテーションで部隊を入れ替える際などに深刻な問題になるおそれがある。装備の貧弱な新編旅団が、装備の充実した既存旅団と交替するという事態になりかねないからだ。実際、後者のような旅団は最近、長い場合は1年半にわたってノンストップで戦い続けた末に、休息や補充のため接触線から離脱する事例が出ている。 ウクライナ軍の組織や人事の動静を追跡しているウェブサイト「ミリタリーランド」(MilitaryLand.net)は昨年10月、陸軍による新旅団の編成について報じた際に、「ウクライナがこれらの部隊のために十分な機械化装備をどこで見つけてくるのかは、謎のままだ」と書いていた。「歩兵戦闘車両はすでに不足している」とも指摘している。 各2000人規模とみて間違いない11個の新編旅団の装備がどんなものになるのかは、そのひとつである第154独立機械化旅団の姿から推測できそうだ。ウクライナ国内のどこかか、チェコにある北大西洋条約機構(NATO)の施設とおぼしき場所で訓練を受ける同旅団の写真に、これまでに配備されている装備を垣間見ることができる。 1960年代に旧ソ連で開発された装軌式のBMP-1歩兵戦闘車と装輪式のBRDM-2偵察戦闘車。1970年代にフランスで開発された装輪式のVAB装甲兵員輸送車。1990年代に米国で開発された装輪式のM-1117装甲警備車。ほとんどが旧式・軽量級の車両であり、どれも装甲は33mm未満の厚さしかないので機関銃の弾丸程度しか跳ね返せないだろう。 第154機械化旅団がより重量のある車両を保有している可能性もある。これも60年前にさかのぼる旧ソ連製T-62戦車だ。ウクライナ軍は遺棄されたロシア軍のT-62を数十両鹵獲している。ただ、写真に見えるT-62は現地の施設の訓練用のものでこの旅団の所有ではない可能性もある。