出所後の事業所勤務で安定も…男を2度目のホーム突き落としに走らせた「小遣いの減額」 法廷から
公判に出廷した被告の父親は、最初の突き落とし事件以前は家族以外とほとんど会話できなかった被告が、夜勤明けの職員に「ご苦労さまです」と気遣ったり、同僚のために旅行の土産を選んだりするようになっていたと証言。「成長していた」と振り返った。
■説明聞きその日に…
そんな生活が急転したのは、A型事業所で勤務を始めて8カ月後。上司とのトラブルがきっかけで欠勤が続き、同年12月18日、退職した。
「悲観せず、次の仕事を探したらいい」。年末年始に帰省し、落ち込んでいた被告を、父親はこう励ましたというが、年が明けた6年1月5日、グループホームの職員から説明が、「引き金」となった。
職場がA型からB型に戻ると、小遣いは週6千円に減る。再びA型で働くには、B型で最低3年働く必要がある-。
心配した母親は、職員に電話。翌日から連休だったため、職員は連休明けの9日に「フォローする」と応じたが、すでに遅かった。小遣いを減らされ、生活を切り詰めることにストレスを感じた被告は、既に犯行を決意していた。
被告人質問によると「両親に迷惑をかけたくない」と実家から遠い仙台での犯行を計画。翌6日午前、新幹線に乗ったが「人を殺したい気持ちが抑えられず」品川駅で下車して在来線のホームに移動し、面識のない女性の背中を両手で押した。
事件はすぐに報じられた。ニュースを見た父親は、犯人の実名は出ていなかったものの、居住地と39歳という年齢で、息子の犯行だと確信したという。
12月17日の論告求刑公判で検察側は、前回の判決と同じ懲役9年では「更生するに不十分」として懲役15年を求刑。これに対し弁護側は、責任能力については争わないものの、犯行に自閉症の影響があるとして寛大な判決を求めた。
判決は24日に言い渡される。(橘川玲奈)