元日本王者の“美女ボクサー”鈴木なな子、名門ジムに移籍 「女子ボクシングをもっとメジャーに…」 立教大卒業後も「プロ一本」に絞った理由
池江璃花子との縁
そんな鈴木の魅力は何か。石井会長に聞いてみた。 「やっぱり空手をやってきただけあって、ストレートは武器です。しかし何より、鈴木は日本の女子ボクシング界の置かれている立場をよく理解している。今の日本のボクシング界は、男子は歴史もあり、最近も井上尚弥の登場があって活況を呈している一方、女子はまだまだ日の目を浴びていない。その状況を変えるには、勝つのが前提で、その上でどう華のある試合をするかが重要です。彼女はその辺りをすごく意識しています。これまでうちのジムでは女子ボクシングをやってきていませんでしたので、彼女が来た時もはじめは断るつもりでした。しかし、鈴木にその意識が強いのを見て、一緒にやってみようと。僕にとっても初めてのチェレンジなんです」 現在、JBC(日本ボクシングコミッション)の女子ボクシングのプロライセンスを持っているのは140名ほど。その中で現役であり、さらに鈴木の実力と見合う相手となるとぐっと数は少なくなるため、国内ではマッチングが難しい。その意味もあり、視線はアジアにある。 「ルートを今、模索しています。アジアでは女子ボクシングが男子と同じくらい人気のある国もあり、市場として可能性がある。そうしたところに出て行って、どれだけ客を集められるか。そのために何をしてあげられるか考えていきたい」 ボクシング人生の転機を迎えた今、鈴木は今後、何を意識していくのか。改めて本人に聞くと、 「まずはもちろん自分の実力を挙げていくこと。その上で、ボクシングの魅力をもっともっとアピールしていきたい。例えば最近、ブレイキングダウンが流行っていますよね。あの煽り方や言葉遣いはなじめませんが、一方で、プロモーションの精神というか、盛り上げ方は多いに参考になることが多いです。選手のSMSの使い方もうまい。女子プロボクシングの世界にはSNSをやっていない選手も少なくない。選手同士でそうした話をすることもないんです。もう少し、女子ボクシングの世界にも目を向けてほしいし、そのためには選手自身がもう少し変わらなければと思っています」 鈴木によれば、女子ボクシングが最も注目を集めたのは、アマチュアボクサーの入江聖奈が東京五輪の女子フェザー級で金メダルを獲った時だという。一方でその際には、テレビでコメンテーターから、「女性でも殴り合い好きな人、いるんだね。嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って、こんな競技好きな人、いるんだ」などとの発言が出て、発言者が謝罪に追い込まれる騒動もあった。 「あの発言ですか? 覚えていますよ。私はあんまり気にはならなかったですけどね。そんなに大きく報道するほどの話かな、と。私も親戚とかある程度の年代の方が集まる席では、同じようなことは言われ続けてきました。そういう人もいるでしょ、という感じで、私はいつでも笑って流していますよ」 その東京五輪、そして今夏のパリ五輪でも活躍した競泳の池江璃花子選手は、同じ学園で学んだ縁があるという。 「池江さんが私のひとつ下ですかね。私は高校で別の学校に行き、池江さんは高校からの入学ですから学校で会うことはありませんでしたが、あれだけの難病を克服して記録を作って。相当な努力をされています。尊敬しています。いつかはお話できたらと思います」 17歳でプロデビューした鈴木の現在の通算成績は11戦8勝、2KOだ。新しいジムで、この戦歴はどこまで上積みされるのか。 「先ほども申し上げた通り、やれるのは30代半ばまでかな。そこまでに世界チャンピオンになりたい。そしてもっともっと、女子ボクシングを受け入れられるスポーツにしていきたいと思います」 撮影協力/モッツ出版株式会社 高須基一朗
デイリー新潮編集部
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