厚生年金はいつまで払う? 60歳以上の保険料や支給額の違いをわかりやすく
4.年金に関するよくある疑問
これまで紹介できなかった、年金に関するその他の質問に回答します。 (1)60歳以降も働いていると年金が減額される? 60歳以降、厚生年金保険に加入する形で働きながら老齢厚生年金を受け取る人の「賃金」と「年金※」の合計額が「支給停止調整額」を超える場合、超過分の半分、受け取る老齢厚生年金が減ります(「在職老齢年金制度」による「調整」といいます)。場合によっては、全額支給停止になることもあります。 ・賃金 = その月の標準報酬月額 +(その月以前1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12) ・年金 = 老齢厚生年金の報酬比例部分のその月の月額換算額※ ・支給停止調整額 = 2022年度は47万円、2023年度は48万円、2024年度は50万円 ※本項目のみ「年金」の定義が特殊ですので注意してください。 2024年度は、賃金 + 年金が50万円以下の場合、年金は調整されず、全額が支給されます。賃金 + 年金が50万円超の場合、調整後の年金は次のように計算されます。 ●調整後の年金支給月額 = 年金 -(賃金 + 年金 - 50万円)÷ 2 たとえば、賃金が月額40万円、年金が15万円の場合は、以下のような計算になります。 ●15万円 - (40万円 + 15万円 - 50万円 )÷ 2 = 12.5万円 この場合、年金は2.5万円調整されて12.5万円支給されることになります。 他方、高賃金の場合など、調整後の年金支給月額がマイナスになるときは、老齢厚生年金は加給年金額を含めて全額が支給停止となります。 なお、計算式と支給停止調整額は、2022年3月までは60代前半と65歳以降の2パターンありましたが、2022年4月、年金額が調整されにくい方向で統一されました。 (2)年金の繰り下げ受給と繰り上げ受給はどっちが得? いつから老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取り始めるかは、60歳から75歳までの範囲で本人が選択します。65歳になる前に受け取り始めることを「繰り上げ受給」といい、66歳以降に遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。 受け取る年金額は、65歳から受け取り始める場合の額を基準として、1カ月早めるごとに0.4%減り、1カ月遅らせるごとに0.7%増えます。 65歳から受け取り始める場合の年金額を100万円(1年分)と仮定した場合、繰り上げ受給と繰り下げ受給の金額にどれくらいの違いがあるのか計算してみましょう。 ・60歳繰り上げ受給の場合、受け取る年金額は24%(0.4% × 60月)減額されて76万円に ・75歳繰り下げ受給の場合、84%(0.7% × 120月)増額されて184万円に 上記をもとに、90歳まで生きると仮定して、いくらもらえるかシミュレーションしてみます。 ●60歳繰り上げ受給の場合 76万円 × 30年 = 2,280万円 ●75歳繰り下げ受給の場合 184万円 × 15年 = 2,760万円 この場合、繰り下げ受給をした方が生涯でもらえる年金は500万円ほど多いという結果になりました。 しかし、繰り上げ受給と繰り下げ受給のどちらが得かは、寿命を予知できれば判断できますが、実際には予知できません。 健康ではない期間を含めて「人生100年時代」です。繰り下げ受給は、老後資金の枯渇を回避する(または先送りする)ために選択できる手段として、有効な手段の一つではないでしょうか。 (3)年金暮らしを支えるために今からできることはある? まず、収入と支出、資産と負債の現状を整理、把握しましょう。次に、「収入を増やす」「支出を減らす」「運用して増やす」の三つの視点で、できそうなこと、取り組んでみたいことをできるだけ多くリストアップします。 最後に、リストアップした項目に対して優先順位とスケジュールを決め、着手しましょう。配偶者がいる場合は、協同して取り組むことが大切です。