考察『光る君へ』6話「全てを越えてあなたがほしい」道長(柄本佑)からまひろ(吉高由里子)への歌よ!漢詩の会から読み解いてみた
悲しすぎる忯子
「忯子さまがおかくれ(お亡くなり)に」。ついに死んでしまった、可哀想に。 高貴な家に生まれ帝のご寵愛を一身に受け御子まで授かったという、当時であれば最高に幸せな女性と称されたであろう忯子。しかし、現代の我々から見ればむしろ薄幸だ。 このままでは悲しすぎるので、NHKは他のドラマで、井上咲楽をめいっぱい幸福な登場人物として生まれ変わらせてほしい。 訃報に冠がないのも構わず狼狽える花山帝。時の帝の最愛の妻の死、ここから大きな事件へと発展する。
結婚してしまえばいいのに!
漢詩の会場からの立ち去り際に、思いのこもった視線をまひろに投げた道長から、まひろへこっそり渡された文、その歌。 ちはやふる神の斎垣も越えぬべし恋しき人の見まくほしさに (聖域とのへだてさえも越えてしまいそうだよ。恋しいあなたに会いたくて) 人目のあった漢詩の会とは違い、今度は直球で恋心を伝えてきた!五節の舞姫で神に捧げる舞を奉納したまひろを、聖域に存在する女性として歌っている。これは本歌取り。本歌取りとは、有名な歌を自作に取り入れる手法だ。当時よく読まれていた『伊勢物語』には、 ちはやふる神の斎垣も越えぬべし大宮人の見まくほしさに (神の社の垣根を越えてしまいそうです。宮中にお仕えする御方をひとめ見たいので) この歌がある。ただ、更に古く、万葉集に柿本人麻呂と詠み人しらずとの2作があり、特に詠み人知らずの歌は ちはやふる神の斎垣も越えぬべし今は我が名は惜しけくも無し (神聖な垣根を越えてしまいそうだ。今は私の名前も名誉も惜しくはない) 並べると、まひろなら万葉集の歌まで、俺の気持ちまで辿り着くはず……という道長の信頼を感じる。家の名も身分差も、全てを越えてあなたがほしいと。 言ってもいいですか。もうこの時点で結婚してしまえばいいのに! 来週ふたりが結婚してめでたしめでたし、からの最終回だ!……取り乱して失礼しました。そういうわけにはいかない、それでは『源氏物語』は生まれない。