沖縄県が米国に営業実態ない株式会社、ビザ取得に事実と反する書類「そう記載しないと審査通過できない」
沖縄県が米ワシントン事務所を運営するため、営業実態のない株式会社を米国に設立し、駐在職員を「社長」として就労ビザ(査証)を取得していた問題で、県側が職員の就労ビザを取得する際、事実に反して県との雇用関係を否定する書類を米政府に提出していたことがわかった。県は読売新聞の取材に、ビザの審査を通すためだったと認めた。県議会多数派の自民党会派は手続きが不透明だとして、県監査委員への監査請求を視野に県を追及する構えだ。(横山潤) 【写真】米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市で)
同事務所は、県が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対などを米側に直接訴える目的で2015年に開設した。当初、米国務省から「政治的だ」との理由で事業者登録に難色を示され断念。駐在職員のビザを取得する方法について米国弁護士の助言を受け、県全額出資の「株式会社 沖縄県ワシントン事務所」を設立し、企業の転勤者向けに発給される「L」ビザを取得した。
県などによると、ビザ取得手続きで県側が米移民局に提出した資料に、「(職員は今後も)沖縄県から直接雇用されることはない」と記載していたことが新たに判明。「株式会社が雇用を管理している」とも記され、ビザが取得できる企業関係者の体裁を取っていた。取材に対し、県基地対策課の大城美千代副参事は「そう記載しないと審査を通過できない。米国法に基づいて申請を行っている」として、改めて手続きに問題はないとの認識を示した。
事務所に現在駐在している2人は、一時的な退職や出向の形も取っておらず、県職員の身分を有している。そのため、形式上は公務員と会社員の「兼職状態」となっている。
ある自民県議は「地方公共団体がビザ取得要件との整合性のために、事実に反する内容を記したのであれば、『虚偽申請』と言わざるを得ない。しっかりと説明責任を果たすべきだ」と批判する。同会派は今月開会する県議会定例会で、事務所に関する監査請求の動議を提出することも検討しており、県の対応次第では、事務所の廃止が議論される可能性がある。