【ラグビー】ウォーカーアレックス拓也、名手ベリック・バーンズにもらったメッセージは。
今年の夏にプロのラグビー選手になった。 日本とオーストラリアにルーツを持つウォーカーアレックス拓也が専業戦士の立場になって抱くのは、多くの同僚への畏敬の念だった。 「(プロ生活は)楽しいですし、自分に向いていると思います。ただ、何より思うのは、いま現役で社員選手をやっている皆さんは本当にすごいなということです」 所属先は九州電力キューデンヴォルテクス。東日本大震災の影響で強化規模を縮小した過去を持ち、2022年発足のリーグワンでは現在2部に加盟。いまも社員選手の仕事の負荷が高いと言われる。 ‘20年入部のウォーカーも、最近までは勤め人だった。法人営業として顧客先の訪問、資料作りで日中を過ごした。 外回りをした日も一度はオフィスに戻り、捕食を摂ってからグラウンドへ出かけるのが日常だった。 「ちゃんとできていたかはわかりませんけど、『自分、頑張ったな』と褒めてあげたい」と思うから、ビジネスパーソンでい続ける仲間へ敬意を持つ。 「僕たちプロ選手は(土曜に試合がある場合)水曜と日曜が休みになりますが、社員選手は水曜日にも仕事がフルであり、実質的な休みは日曜だけ。その日が試合になっても、次の月曜からは普通に仕事。朝から仕事をしっかりして、練習にスイッチを入れ、その後に自分の時間を使って筋トレをするなど、オンオフの切り替えも素晴らしい。…この生活を十何年も続けている人は、本当にラグビーが大好きなんだろうな、と。この人たちのためにももっと頑張ろうと思えて、その分、プロになってよかったと感じます」 特に松下彰吾、磯田泰成ら人事部のメンバーには特に頭が下がる。従業員の部署変更などへ携わるタフなセクションにいるからだ。 「部署のご理解があってこそだと思いますが、会社の中枢の部署にいながらラグビーを…というのは、本当に凄い。よくなさっているなと感じます」 身長184センチ、体重106キロ。ジャッカルの得意なFW第3列であり、就任2年目の主将でもある(昨季は共同主将)。 クラブには外国人をはじめとしたプロ選手もいて、大多数の社員と比べればやや限定的な帯同期間ながらも主力争いに絡む。様々な背景を持つスコッドのモチベーションを高次で保つべく、主将が意識するのは「グラウンドに1歩、足を踏み入れたらスイッチオンする」ことだという。 「チーム内での競争力が高まり、いい練習ができている。そのなかで規律を守らせ、チームにそぐわないプレーについては『ここは、こうしたほうがいいんじゃないか』と(相手が誰であれ)伝えることを意識します。グラウンドを離れたら、社員は仕事を頑張り、プロはチームに何ができるかを考える。そして、いざグラウンドに入ったら、全員が同じレベルで、全力で、戦い抜く」 12月21日の開幕へ準備を進める中、援軍にも助けられた。 元オーストラリア代表SOのベリック・バーンズが、今季からコーチングコンサルタントに就いている。 日本の現埼玉パナソニックワイルドナイツでも活躍した通称「バンジー」は、11月中旬に約2週間、キューデンヴォルテクスに帯同した。戦術面のコーチングのほか、選手への個別指導も施したようだ。ウォーカーの談。 「選手全員に分け隔てなく情報を教えてくださって、その2週間でかなり成長しました。色んな選手がバンジーに質問へ行くのですが、彼は最後までグラウンドに残ってスキル、メンタルのことについて答えてくれました。フレンドリーで、向こうのほうからもよく話してくれました」 自身も主将の心構えを聞いた。 「主将はチームの中心。弱気な姿を見せてはいけない。情熱は持って、誰よりも冷静であれ」 一流に託された言葉を胸に、見据えているのは12月21の開幕節だ。福岡・ベスト電器スタジアムで日本製鉄釜石シーウェイブスを迎える。 (文:向 風見也)