<捲土重来>’20センバツ明徳義塾 チームの軌跡/中 練習で気持ち切り替え /高知
2019年10月13日、県大会準決勝。高知中央との試合が始まる前、明徳義塾のバッテリーは「長打力のある選手が多いから低めで防ごう」と話していた。この日は強風が吹き荒れており、フライを捕るのも難しいコンディションだった。さらにエースの新地智也投手(2年)は左足の甲に痛みがあり、本調子ではない。変化球が入らず、ストレートを狙われた。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 4―6と2点を追う展開で迎えた六回、4番・元屋敷大誠選手(2年)の2ランなどで明徳義塾は一挙6点を奪い、高知中央の先発投手をマウンドから引きずり下ろした。 だが高知中央は驚異の粘りを見せる。すぐに2点を返し、八回に同点に追いつくと、セカンドゴロの間に三塁ランナーが還り、逆転に成功した。明徳義塾は九回に1死二、三塁のチャンスを作ったがあと一本が出ず、10―11で試合は終了した。 「今から帰ってノックやるぞ」。試合後、馬淵史郎監督(64)の言葉に選手たちは耳を疑った。「明日も試合なのに……」。次の日は四国大会の最後の1枠がかかった大事な3位決定戦。選手たちは準決勝敗退という結果に意気消沈し、気持ちを切り替えられないままバスに乗り込んだ。 学校に到着し、1~2時間ほど練習に打ち込んだ。次第に選手たちの様子が変わり、控え選手も含めた一人一人が声を張って練習を盛り上げ始めた。準決勝の最終打席に立った合田涼真選手(2年)は「ノックをするうちに段々気持ちが切り替えられてきた」と振り返る。チームが一つになった瞬間だった。 翌日の高知商との3位決定戦。チャンスで打てずに残塁を重ねる展開となったが、先発の新地投手に焦りはなかった。高知中央戦で大量点をあげた野手陣を信じ、「次は自分が迷惑を掛けないように」と粘りの投球を続けた。九回、寺崎元輝選手(2年)がライト方向に振り抜いた打球が値千金の決勝タイムリーに。勝利を収めると鈴木大照主将(2年)は「四国大会に行けることがうれしい」と胸をなでおろした。 試合後のインタビューで馬淵監督は「これで四国大会のベスト4で高知中央と当たるチャンスを得た。この2週間で鍛え直す」と雪辱を誓った。「挑戦者」の立場になったチームは「打倒中央」という新たな目標に向かって、がむしゃらに突き進んでいった。