中国きっての国際派エコノミストが米国の経済安保戦略に忠告 「われわれは地政学のために生きているわけではない」
中国政府系シンクタンク、中国国際経済交流センターの朱民副理事長が5月に来日し、共同通信のインタビューに応じた。朱氏は過去に中央銀行の中国人民銀行で副総裁を務め、中国出身者として初めて国際通貨基金(IMF)副専務理事を担った経歴も持つ国際派だ。テーマは中国経済の現状から米中対立まで多岐にわたったが、とりわけ次の発言が印象的だった。 「トランプ政権時代に米国が中国に貿易戦争を仕掛けてから6年。両国の貿易量は一貫して増加してきました。結局のところ、われわれは地政学のために生きているわけではなく、食べるために、よりよい生活をするために生きているということです」。 この主張に反発を感じる人もいるだろう。だが重要なのは、中国がこうしたロジックで国際社会を「説得」し、米国主導の中国包囲網に対抗しようとしているという点だ。その自国や国際社会に対する見方は「戦略的」だと感じた。(共同通信=竹内健二)。 ▽中国、今後5年は5%成長
朱氏は習近平指導部を支えてきた経済・金融の専門家であり、中国の2025年までの中期計画「第14次5カ年計画」の策定にも携わった。 中国経済は近年、新型コロナウイルスによる打撃と、中国恒大集団など不動産大手の経営危機、米国によるハイテクの締め付けが重なって減速している。だが朱氏は、経済の実力を示す潜在成長率は世界平均よりはるかに高い5%台を保っていると強調した。 「これまで中国経済を支えてきた『トロイカ(三頭立て馬車)』、すなわち、インフラ投資、不動産、輸出にはいずれも依存できなくなりました。新たな3本柱が必要です。国内消費の拡大と製造業のデジタル化、カーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出ゼロ)の三つで、つまり経済の構造転換です。これが実現できれば、中国は今後少なくとも5年、5%かそれ以上の成長率が見込めます。私たちは世界の成長率が2023年以降、2.7%前後になるとみています。中国が5%を保つことは世界にも大きく貢献します。発展すればするほど成長率が下がるのは各国共通なので、中国もいずれは潜在成長力が4%台になります」