女性社長はわずか0・8%、でも役員は急増中 あまりに極端なジェンダーギャップ、見えてきた企業の実情
▽「社外取締役女性ラボ」を立ち上げ 生え抜きの女性が続々と経営陣に加わるのが理想だが、多くの企業には十分に幹部が育っていない現実がある。こうした中、男性中心の企業風土を変革する先導役として、社外人材には期待が寄せられている。 会社経営の椿奈緒子さんは3年前に初めて上場企業の社外取締役に就任した。当時のことを「社外取締役として、どのように価値を発揮すれば良いのか。暗中模索だった」と振り返る。 IT大手の会社員時代に複数の新規事業を立ち上げた経歴を買われたが、社外取締役として貢献するノウハウは持ち合わせていなかった。社外取締役を務めた女性ら10人以上に体験談を聞いて回ったところ、大半が畑違いとも言える「女性活躍推進」に向けた役割も期待され、悩みながら取り組んでいたことが分かった。 この気付きを基に2022年、意見交換と情報発信を目的とした集まりを立ち上げた。「社外取締役女性ラボ」だ。椿さんは「それぞれの成功事例を展開できれば取締役会はもっと機能しやすくなる」と力を込める。
椿さんは現在、別の上場企業で社外取締役を務めており、この企業で初となる女性社員向けキャリアセミナーを実施した。参加者からは「社外取締役と接点を持ち、背中を押してもらえるのはうれしい」といった感想が多く寄せられたという。近く全社員向けのマネジメント研修も開催する予定だ。 ▽女性役員は「お飾り」のケースも 社外取締役が活躍するためには、企業側の努力も重要になる。複数の企業で社外取締役を務める女性ラボのメンバーは「企業側が『お飾り』で女性役員を置くケースは実際に存在すると思うし、そのような環境で力を発揮するのは難しい」と指摘する。取締役会の会議時間は議論を尽くすには限られており「取締役会以外の場で社内外の役員同士が十分な対話の機会をつくることが必要だ」と強調する。 地方議員出身の社外取締役の女性は「企業が提供しているサービスへの(自分自身の)理解が深くないことによる信頼不足を感じたことがある」として、情報収集のため取締役会以外の社内会議にも積極的に参加している。自身の発言に対して快い顔をしていない執行役員がいることに気付いた際には「その言動は傷つくので控えてほしい」などと伝え「対等な土俵づくりに努めた」という。