女性社長はわずか0・8%、でも役員は急増中 あまりに極端なジェンダーギャップ、見えてきた企業の実情
多数の企業からオファーが集まった結果、3~4社の役員を兼任する女性も多い。経営人材コンサルティング会社「ボードアドバイザーズ」(東京)の佃秀昭社長は「女性を迎える企業ニーズが高まるのは確実で、人材に余裕がない状態だ」と指摘する。 ▽投資家は女性役員の比率を重視 女性役員の増え方に比べ、なぜ社長は少ないのだろうか。その背景について日本総合研究所の石井隆介マネジャーは「社外から招く役員が多く、内部昇格が少ない」点を挙げる。女性活躍を進めるためには「内部で育てた女性社員を役員に登用すべきだ」と訴える。多様性に富む企業は社内議論が活発で「意思決定の質が向上して成長を見込みやすい」と話す。こうしたことから、機関投資家が投資先を選ぶ際、役員や管理職に占める女性比率の高さを重視する傾向が強いという。 女性役員比率が高い企業の状況を見ると、大和証券グループ本社は社外取締役を含む役員19人のうち女性が8人を占める。急場しのぎで外部の女性を集めるのではなく、着実にジェンダー平等を進めてきた成果だとしている。
大和証券グループ本社は2005年に女性活躍推進チームを発足させ、女性が働きやすい環境整備に20年近く前から取り組んできた。当時社長だった鈴木茂晴氏が「片方の翼でここまできた。両翼でさらに」を合言葉に、生え抜きの女性社員4人を同時に役員に登用するなどトップ自らが強力な推進役となった。 その後、男性社員とキャリアで差がつきやすい産休・育休期間に過去の実績を基に昇格できる制度を整え、スキルアップ研修も参加者の男女比率が半々になるよう意識するなど、段階的に施策を広げてきた。2017年に社長に就いた、現会長の中田誠司氏は「多様性を力に変える」と繰り返し、女性管理職を対象とした研修も導入した。 中核子会社の大和証券では足元の女性管理職の比率は23%程度。日本企業の中では高い方だが、意思決定に参加する女性をさらに増やすため、さまざまな分野で経験を積んだキャリア人材の役割に期待を寄せる。 人事担当の白川香名専務執行役は「多角的な見方が業務にプラスだと感じる場面が増えれば、女性を含む多様性の確保が力になると実感するはずだ」と語る。あらゆる階層でキャリア人材を採用し、女性社員と切磋琢磨する環境づくりを目指す。