「銀歯」「CAD/CAM冠」知っておきたい保険適用の「被せ物」の特徴/歯学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<32> 歯に使う保険適用の被(かぶ)せ物といえば全部鋳造冠、いわゆる「銀歯」が一般的でしたが、近年では白い被せ物「CAD/CAM冠」も保険導入されています。歯を削り、型どりをして模型に起こし、かみ合わせや周囲の歯とのバランスを見ながら被せ物の形態は決まります。蝋(ろう)を彫刻して鋳型を作り、高温で溶かした歯科用合金を流し込み、その後冷まして固まったものを磨き上げて作るのが銀歯です。 一方で「CAD/CAM冠」は、被せ物の形をコンピューターでデザインし、設計データをもとに三次元切削加工機がブロックを削り出して作ります。いずれの場合も国家資格を持った「歯科技工士」が中心となり作製するため、形態に大きな差が出ることはさほどありませんが、最も異なるのが素材です。 銀歯は頑丈であるため、歯を削る量が少なくて済みます。一方で懸念されるのが金属アレルギーの問題です。歯科用合金の組成は50%前後が銀、その他パラジウムや金、銅、イリジウムなどからできています。口の中で長期間唾液や飲食物にさらされることで金属イオンが流出し、体質によってはアレルギー反応が起きてしまう方がいます。腐食によるざらつきや、大きな力がかかる場所では変形することもありますので、二次う蝕(虫歯の再発)は避けられません。 CAD/CAM冠の主成分はレジンというプラスチックですが、セラミックに使われる粉末を混ぜて強化している分、かみ合わせにも耐えうる材質として開発されています。しかしながら銀歯よりは厚みが必要なため、歯を大きく削る必要があります。最大のメリットは、歯と似た色調であるため見た目が目立ちにくいという点です。しかしミクロで見ると細かな傷がつきやすく、汚れを吸着する特徴があります。プラーク(歯垢=しこう)がたまっていても気づきにくいため、歯ぐきの腫れや出血といったトラブルにもつながります。