ビュッフェは持続可能か?――葛藤するホテルの試行錯誤とサービスの未来【#コロナとどう暮らす】
コロナ禍で、ホテルの定番として楽しまれてきた「ビュッフェ」も、中止や定食などへの様式変更を余儀なくされた。現在、休止したままのホテルもあれば、感染対策を講じて再開したホテルもある。これからのビュッフェはどうなるのか、取材した。(取材・文:城リユア/撮影:藤原江理奈/Yahoo!ニュース 特集編集部)
安心・安全最優先でホテルビュッフェを休止
「ビュッフェでは、料理に並ぶ際に3密になりやすく、大皿での料理提供、トングやカトラリーの共有もあります。社内で議論を重ね、そのままの形で営業を続けるのは難しいということに。お客様の安心・安全を最優先するためにも、早めに休止を決断しました」 こう語るのは、三井不動産ホテルマネジメントの取締役でグループ全体の新型コロナウイルス感染防止対策の運営を統括する内川孝広さん。同社では、3月4日に、傘下の全ホテル(7月時点で33ホテル)でビュッフェを休止している。
「例えば『三井ガーデンホテル日本橋プレミア』では、加賀料理の料亭『日本橋浅田』が手掛ける、和洋のビュッフェが人気でした。プレート形式のセットメニューになって、がっかりしたというお客様の声もありました」
好きなものを好きなだけ食べられてお得感が得られるビュッフェと違い、セットメニュー(定食)はおかわりがしにくい。料金はビュッフェの時と同じであるため、落胆の声が漏れても仕方がないだろう。
ホテル側にとっても、ビュッフェはコスト、労力面でメリットが大きい。ホテル評論家・瀧澤信秋さんはこう解説する。 「ゲストのテーブルごとに料理を出す手間がかからず、人員を多く割かずに運営できますから。ホテルビュッフェはある種、ゲストとホテルの相互利益的な部分があるので、これほど人気になったのです」 大手コンサルティングファームのPwCコンサルティングがまとめた「COVID19:ホテル業界への影響」のレポートによると、2020年4月、全国平均の月次稼働率は前年比83.5%の減少となった。 三井不動産ホテルマネジメントの内川さんもこう語る。 「地方からの出張者や東京五輪で見込んでいたインバウンド需要を失い、楽観できない状況が続いています。宿泊者が少ないうちは、フードロスの出にくいセットメニューがコスト面で有利なものの、今後稼働率が回復していけばオペレーションが厳しくなりそうです」 ホテルビュッフェは運営を外部のレストランや、ビュッフェ専門業者に外部委託しているところが少なくない。 「ホテル側がビュッフェ再開を望んでも、外部委託業者が安全面やコスト面で慎重になれば、実現しないという側面があります」(瀧澤さん) 三井不動産ホテルマネジメント傘下のホテルも事情は同じだ。ビュッフェを求める顧客の声に応えたいものの、ホテルごとにビュッフェ委託先の事情や環境、さらに客層も異なるため、個別にコロナ対策を考える必要があるという。一律再開は難しく、しばらくは慎重にセットメニューを提供する予定だ。