【高校サッカー選手権】PK戦で土壇場まで追い込まれるも、京都共栄を下し決勝へ
第103回全国高校サッカー選手権京都予選準決勝が11月3日にたけびしスタジアム京都で行われた。第1試合では東山と京都共栄が対戦した。 【フォトギャラリー】東山 vs 京都共栄 プリンスリーグ関西2部で優勝争いを繰り広げており、府内でも3冠を目指す東山。対する京都共栄はプリンスリーグ関西1部で最下位に沈んでいるが、大会前に昨季の高校選手権・準優勝の近江に勝利するなど復調の兆しを見せて今大会へ挑んでいる。 試合は堅守を特徴とするチーム同士の戦いと合って、引き締まった戦いが繰り広げられた。攻撃を数多く仕掛けたのは東山。流れの中からの仕掛けに加えて、得意のセットプレーやロングスローでゴールに迫る。対する京都共栄は守備で耐える場面が多かったが、最後の局面では身体を張った守備で自由にさせない。攻撃では2トップを起点として何度かカウンターを仕掛けるが、厚みのある攻撃をなかなか繰り出せず、チャンスも序盤の一度だけだった。40分ハーフの前半はスコアレスで折り返す。 後半の立ち上がりは、東山が攻勢を仕掛ける。43分にFW小西凌介(3年)がエリア内で放ったシュートはGK山本大智(2年)が好セーブ。44分にCKからDF津崎翔也(3年)が頭であわせるが、ライン上でDF羽賀星貴(2年)がクリアする。46分にはFW山下ハル(3年)がドリブルで相手守備網を突破してミドルシュートを放ち、GKがセーブ下したこぼれ球にMF吉田航太朗(3年)がつめるが、カバーに入ったDFとゴールポストに阻まれてしまう。 その後も東山が流れをつかみ、60分にはドリブルで右サイド深くまで侵入した吉田の折り返しをゴール前で山下があわせる絶好機を迎えるも、シュートは左ポストを直撃。その後も東山はチャンスを作り出し、後半だけで12本のシュートを放ったがネットを揺らせない。対する京都共栄も後半はシュート0本と、前半よりも我慢の展開を強いられたが、守備で集中力を切らさない。何度もクロスやセットプレー、ロングスローでゴール前へボールを送り込まれたが、競り合いでは相手と互角に渡り合い、守備網を抜けられた場面では相手の決定力不足もあって、失点は許さなかった。 前後半では決着がつかず、勝負の行方はPK戦へもつれ込んだ。先攻の東山は1人目と2人目が連続して止められる苦しい展開。いずれも京都共栄のGK山本がコースを読んで防いだ。一方の東山GK麻生太朗先(1年)も2人目キッカーを止めて見せた。その後は両チームともPKを成功させ、後攻の京都共栄の5人目を迎える。決めれば勝利、東山は止めなければ敗退が決まるという場面だ。キッカーは中央へ蹴り、GK麻生は左方向へ飛んでいたが、残った足でボールに触ってPKを止めて見せた。九死に一生を得た東山は7人目のキッカーを成功させると、GK麻生が京都共栄の7人目を止めて試合終了。PK戦を5-4で制した東山が、~辛くも決勝進出を決めた。 東山はPK戦で土壇場まで追い込まれたが、なんとか踏みとどまって決勝進出をつかんだ。立役者となったのはGK麻生。3本のPKを止めて、チームを救った。今大会は3度目のPK戦となったが、いずれも好守を見せている。試合後、福重良一監督も「(強い)メンタリティーを持っているし、伸びしろもある。彼に関しては今大会で成長している」と評価する。 試合については「全体的にボールへの反応が遅かった。はっきりした戦い方をする相手に対して、反応が遅かったですね」と振り返った。何度もゴールに迫った後半は「自分たちの力を出せたが、クォリティーが低かった。チャンスを外した後、じれずにやれればいいんだけれど、どうしても自分たちで苦しめてしまう」と指摘する。それでも結果をつかんでファイナルまで勝ち上がる勝負強さは、チームや個人が積み上げてきたものの表れだ。指揮官も「苦しみながらではあるが、そういうところで精神的に強くなっているかもしれない」と話している。涙を呑んだ昨年度とは違う結末を迎えるべく、決勝戦へ挑む。 敗れた京都共栄はPK戦でつかみかけた勝利をものにすることができず、ベスト4敗退となった。試合後、上野道裕コーチは「前半は向かい風の中でもチームでまとまって狙い通りの戦いができましたが、後半は相手のセットプレーが増えた中で東山の力強さや勝負強さ、苦しい展開でも自分たちの流れに持ち込める強さを感じてしまいました」と話している。攻撃でいい形まで持ち込めず、セカンドボールの争いでも優勢に立てず、相手にセットプレーやロングスローへ持ち込まれる場面が増えてしまった。 それでもゴール前で見せた守備の強度や集中力はさすがだった。クロス対応への準備、マークや競り合いなどをしっかりと遂行し続けてPK戦まで持ち込み、決勝進出まであと一歩まで迫っている。 キャプテンのDF大野洋翔(3年)は「守備の時間が長かったけれど、プリンスリーグで強い相手にも耐える戦いをしてきました。そこは80分間、やれたと思います」と振り返っている。プリンスリーグでは耐え切れずに失点を繰り返す試合が多かったが、この試合では「身体を投げ出して守る、相手の正面に立ってシュートを防ぐ」ことを徹底し、無失点でPK戦へ持ち込んだ。サイド攻撃やセットプレーの機会が少なかった攻撃面では良さを出せなかったが、苦しみながらも積み重ねてきた成果がピッチに現れた試合だった。 選手権は終わったが、まだAチームが参加するプリンスリーグ関西1部や、Bチームが参加する京都府1部リーグの試合が残っている。昨季から今季にかけて全てのカテゴリーで昇格を成し遂げており、今季はより高いレベルで苦しんではいるが、選手やスタッフにとっては貴重な戦いの場となっている。Aチームは残り3試合、Bチームは残り4試合、残留をつかみとるための戦いへ挑む。 (文・写真=雨堤俊祐)