産道のように細い洞窟内に挟まり身動きが取れない…悲劇的洞窟事故が話題に その恐怖の結末
27時間におよぶ救出作戦
ジョンがはまってしまった穴は、入口から120m、細い通路の奥にある場所。救助隊にとって、到達困難な場所だった。 最初に現場に到着したのは、ボランティア救助員のスージー・モトラだった。スージーに対し、ジョンは「来てくれてありがとう」と礼を言い、「本当に、本当に、ここから出たい」と感情をこめて語ったという。 救助隊はジョンの足をロープで括り、滑車を使って引き上げる方法を試みた。 逆さ吊りの体勢の苦しさ、そしてロープを括った足の痛みにジョンの体力は限界に達していた。ロープに吊られ、体は少し上に上がったものの、穴から抜けるところまでにはいきつけなかった。 数時間の試みの後、何とロープを支えるボルトを打ち込んだ岩が崩れ去った。 その場にいた救助員はカラビナが顔に激突し怪我を負った。かつ岩崩れの衝撃で、ジョンはさらに穴の奥に落ちてしまった。 その後も救助隊が交代し、合計6人がジョンのいる場所での救助を試みた。ジョンの足を切断して引き上げる方法等も検討されたが、安全かつ確実に救出できる方法は最後まで見つからなかった。 長時間、逆さ吊りの姿勢で内臓が圧迫されたジョンは、呼吸が浅くなっていった。通信機器を洞窟内部に入れたため、ジョンは外部の声を聴くことが可能だった。妻のエミリーが声をかけ、励まし続けた。 しかし救助隊の努力は報われなかった。逆さ吊りの体勢になって約27時間後の11月25日23時56分、医師がジョンの心肺停止を確認。死亡が宣告された。 ジョンは自ら「自分の墓場」に這って入っていった人物として、人々の記憶に刻まれることとなった。
今も穴の中に眠るジョン
ジョンの遺体の回収策も様々方法が検討された。しかし最終的に遺体回収は危険すぎると判断された。ジョンの家族と洞窟のある土地の持ち主は、遺体が中にある状態で洞窟を永久に閉鎖することに合意した。 閉鎖に伴い、洞窟の入口部分はコンクリリートで蓋をされ、その場所にジョンの祈念碑が埋めこまれた。 今なぜジョンの死が話題になっているのかは分からない。しかし夏は、プロ・アマを問わず、多くの冒険家・探検家が挑戦を試みる季節でもある。 彼の死を無駄にしないためにも、無謀な挑戦はしないでほしい。天国のジョンもそう願っているはずだ。
文:宮田華子