田中博康調教師をコンプレックスから解き放ったレモンポップ【チャンピオンズC】
田中博康厩舎にとってのJRA重賞初勝利、GⅠ初勝利はともにレモンポップ。厩舎の飛躍のきっかけになった馬と言っても過言ではありません。 【写真で振り返る】レモンポップ国内GⅠ「無敗伝説」 まだJRA重賞を勝っていなかった昨年の年明け。田中博師は、高柳大、安田翔、武英、武幸、林調教師といった優秀な同期への〝コンプレックス〟を口にしていました。 「日々スタッフとミーティングをして、やりたいことが浸透してきた実感はあります。ただ、大きい舞台で活躍できていない。同期で開業した厩舎は、重賞やGⅠをすでに勝っていてタイトルでは遅れを取っています。『負けたくない、何とかタイトルを取りたい』と思ってやっています」 いつもクールな田中博師から、ものすごい熱量を感じたのを覚えています。その直後に、根岸SでJRA重賞を初制覇。フェブラリーSへ向かうレース前、田中博師はレモンポップについてこう話していました。「種牡馬にしなきゃいけない馬だと思っています。そのために、タイトルが取りたい」。口ぶりはいつものように淡々としていても、強い意志が感じられる言葉。名馬に携わる調教師としての責任感が伝わりました。 宣言通りにフェブラリーSでJRA・GⅠ初勝利を果たすと、その後はGⅠタイトルを6つ積み上げました。レモンポップだけでなく、ローシャムパーク、レーベンスティール、ミッキーファイトと大舞台で活躍する馬を次々と輩出し、今年はすでに45勝(1日終了時点)を挙げてキャリアハイを更新しています。 引退式では「ただただ、感動しました」と話した田中博師。レモンポップを無事に種牡馬入りさせた今、どんな心境なのか、今週の美浦でじっくりと取材したいと思います。
三嶋 まりえ