イメージカラーで振り返る都知事選 緑・紫は寄り添い示す複合色
連載《カラーコミュニケーション》Vol.5
米国の大統領が公の場に立つ時、ネクタイの色などを戦略的に選んでいるというのは有名な話ですが、ここ日本でも政治家が自らのイメージカラーを打ち出して自身をアピールするケースが増えています。今回は2024年7月に実施された東京都知事選挙で上位につけた3者のイメージカラーの持つ意味を、カラーセラピストの志村香織が解説します。 【もっとイラストを見る】緑・紫・チェリーピンク…あなたが受ける印象は?
■安心、安全を印象づける「百合子グリーン」
3選を果たした小池百合子氏のイメージカラーといえば、緑。環境相の頃から緑をファッションに採用し、その理由を「エコロジーと平和を象徴するカラー」と語っています。2016年の都知事選ではSNSを通じて、支持者に緑のアイテムを身に付けるよう呼びかける「百合子グリーン」作戦を展開して、初当選したことを覚えている方も少なくないのではないでしょうか。 緑は自然界を象徴するカラー。古来、自然の恵みを享受してきた人間にとっては、安心、安全を感じさせてくれる色です。科学的に見ても目に優しく、見る人を穏やかにリラックスさせる効果があるといわれています。 また、暖色と寒色のちょうど中間にある色であることから、中立的なムードやバランス感覚のよさをアピールできるカラーでもあります。ファッションに取り入れてみると「公平な人」「フラットな見方ができる人」というイメージを印象づけることができるでしょう。 あらゆる色の中でも万人受けしやすい緑を勝負カラーとして使い続けていることは、小池氏にとって有利に働いているのではないでしょうか。
■「赤と青を足した紫」に思い込めた石丸氏
2位につけた前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は、候補者の中で最も話題を集めた人物といっても過言ではないでしょう。8月末には同氏をモデルにした映画「掟(おきて)」が公開される予定とあって、またも注目を浴びそうな気配です。 今回、都知事選に臨むに当たり、彼が選んだイメージカラーは薄い紫でした。2020年の安芸高田市長選の際に採用したのは自身が好きな色だという緑でしたが、今回は「百合子グリーン」を意識してか、別の色に。 紫を選んだ理由について、同氏は2024年5月の記者会見で「赤と青を足した色」「大きな政治の動きで右か左かという議論があるけれど、そこに縛られるのではなく、もっと大事なものを右も左も合わせて実現していく必要があるという思いで選んだ」と語っています。 紫は石丸氏の言う通り、赤と青という対照的な2色を足した色。そんな特徴から、紫は物事や人間の持つ二面性を表すといわれています。また、相反する2つのものを1つにつなぐ、まとめるといった意味もあり、このあたりも同氏の「右も左も合わせて」というコメントと一致。彼が色彩心理に着目し、意図的にイメージカラーを選んでいることが分かります。