韓国軍はベトナム戦争で民間人を虐殺したのか?認める司法、否認の政府 映画「国際市場で逢いましょう」が触れた、派兵を巡る韓国の分断
2014年の韓国映画「国際市場で逢いましょう」で、俳優ファン・ジョンミンが演じた主人公は、ベトナム戦争に技術者として渡り、韓国軍と行動を共にする。「想像してみよう。ベトナムの戦場に俺たちの子どもが金を稼ぎに来ていると…。こんなこと起きなければ良かったのに。でも起きてしまった以上、(子どもでなく)自分が経験しているのが、せめて良かった」。主人公は韓国に残る妻へ、こう手紙を送った。 101歳の「ナチス戦犯」に禁錮刑、ドイツ司法機関が懸命の追跡 親衛隊の大物はみな死亡、残るは下級隊員
1964~73年、韓国は米国の要請により、同じ自由主義陣営の南ベトナムに約32万5千人を派兵、約5千人が戦死した。韓国メディアは1999年から韓国軍によるベトナムでの民間人虐殺を報じ出し、2020年、ベトナムの女性が、韓国軍に家族を虐殺されたとして韓国政府に損害賠償を求める訴訟を韓国で起こした。 昨年2月の一審判決は虐殺を認定したが、韓国政府は控訴した。今年1月の控訴審第1回口頭弁論でも、韓国政府は「国家賠償を命じるのは正義に反する」と主張した。虐殺の歴史をどう受け止めるべきなのか。韓国内が割れている。(共同通信ソウル支局・富樫顕大、ハノイ支局・松下圭吾) ▽米軍調査の事件も 韓国の市民団体は、ベトナム各地での韓国軍による虐殺犠牲者を計約1万人と推計するが、正確な実態は不明だ。このうち、ベトナム中部クアンナム省のフォンニィ・フォンニャット村で1968年に起きた事件については、直後に米軍が調査した資料などが残る。この村の女性グエン・ティ・タンさん(63)が2020年に提訴した。
タンさんは、ベトナム現地での共同通信のインタビューに「脅されて壕から出ると銃撃された。5歳の弟は顔面を吹き飛ばされた。地獄のようだった」と語っている。7歳だった自身も腹部を撃たれ負傷し、1年近く入院した。 一審のソウル中央地裁は、乳幼児を含む非武装のタンさんの家族や村人が韓国軍に集められて射殺されたと認定し、約3千万ウォン(約340万円)の賠償を命じた。 ▽市民団体の支援活動と、政府の「遺憾」 1999年に初めて虐殺を報じたのは、リベラル紙ハンギョレ新聞の系列週刊誌だった。韓国の市民団体は「ミアネヨ(ごめんなさい)、ベトナム」という、ベトナムの虐殺遺族や貧困層への支援事業や現地訪問といった活動を始めた。 以後、韓国の大統領のうち、リベラル系の金大中、盧武鉉、文在寅大統領が、それぞれ「不本意ながらベトナム国民に苦痛を与えたことが申し訳ない」「韓国民は心に負い目がある」「両国間の不幸な歴史に遺憾を表明する」と言及した。一方、公的機関が明確に虐殺を認定したのは、ソウル中央地裁の判決が初めてだった。