韓国軍はベトナム戦争で民間人を虐殺したのか?認める司法、否認の政府 映画「国際市場で逢いましょう」が触れた、派兵を巡る韓国の分断
▽反発と自省 李さんは「参戦兵は、韓国政府がアピールするように『自由を守るための十字軍』と考えたのではない。現実は(貧しい地方などから)食べる物がないから参戦した軍人たちだ」と指摘する。 昨年2月の判決直後、韓国の退役軍人の団体は「一部の民間人に被害を与えたケースがあり得るが、不可避な軍事作戦だった」と反発した。一方、ベトナム参戦兵の聞き取り調査に取り組む市民団体「アーカイブ平和記憶」によると、「ベトコンだけでなく一般市民も死んだだろう。擁護できない」などと話す元兵士もいる。 損害賠償訴訟の一審の口頭弁論では、ベトナムに派兵された元海兵隊員の柳振聲さん(78)が出廷し、当時、民間人とみられる約70人の死体を見たと述べ、部隊で「隊員が武勇伝のように(殺害の様子を)話していた」と証言した。当時は罪悪感を感じられなかったが、「戦争の残酷さを知らせたかった」ため証言に立ったと打ち明けた。
▽日本の歴史問題も訴える弁護士ら ベトナム虐殺の原告側弁護団の中には、日本企業を相手取った元徴用工訴訟や、日本政府を相手取った従軍慰安婦訴訟の原告担当弁護士も数人いる。 徴用工訴訟の原告も代理する林宰成弁護士は、「私は日本と戦っているのではないし、(虐殺を巡る裁判も)ベトナムと韓国が戦っているのでもないと思う」と話す。「普遍的人権の問題として、ベトナムでの民間人虐殺について韓国政府は責任を取らねばならず、日本植民地期の強制動員や慰安婦問題については日本政府と企業が責任を取らねばならない」と強調した。