「2+1」の曖昧な民主主義のススメ
細川護熙氏を首相とする連立内閣が誕生し、自民党一党支配の「55年体制」に終止符を打った1993年から25年がたちました。この間、民主党による政権交代が起きるなど、一時的に自民党が政権から離れた時期はありましたが、現在の自公連立体制は盤石のようにも見えます。さらに、その中にあって安倍晋三政権の長期化は著しく、第一次政権を含めた通算在職日数は現時点で戦後3位で、歴代トップの桂太郎を上回る可能性も出てきました。 自民総裁選ー仲間主義「安倍・菅政権」の強さと「個室の大衆」ホンネの民意 イギリスの歴史家ジョン=アクトンが「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対的に腐敗する」という言葉を残したように、長期政権は政治的腐敗を招くとの批判があります。しかし、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、長期政権イコール悪とは必ずしもいえないといいます。その一方で、政権交代がなくても民意を反映させる日本独自の方法を模索する必要があると指摘します。日本の文化に合った民主主義とはどのようなものが考えられるのでしょうか。若山氏が論じます。
長期政権は悪くない?
自民党総裁選で連続三選を果たした安倍晋三首相は、久々の長期政権を担うこととなった。 だがまず長期一強であることに批判があり、異なる意見を無視して官邸の上意下達で事を進めるともいわれ、仲間主義や不誠実さに対する批判も強い。また第四次改造内閣のメンバーも代わり映えせず、総裁選に対しては自民党の中だけで総理大臣を決めるのはどうかという意見も出ている。 しかしどうだろう。国家の政治でも企業の経営でも、1年や2年で結果を出すのは不可能だ。そんな短期間の成果を目的とすれば、その場しのぎの一時的な浮揚策に頼り、かえって将来に禍根を残すものである。少なくとも6~7年は続けなければ、政治家や経営者の真価を問うことはできない。今の日本は、アメリカの影響か、圧力か、短期的な成果を求めすぎる。昔はそんな国ではなかったような気がする。 また他国の政治の現実が、日本の政治以上に民意を反映しているともいいにくい。トランプ大統領は次々と側近を入れ替え、どちらに向かうのか予測もつかず、プーチン大統領は長期独裁で政敵は危険にさらされ、習近平総書記には「核心」という言葉が使われるほど権力が集中している。比較的評価の高いメルケル首相も超長期政権である。 逆に日本の政権はこの数十年間、小泉政権、安倍政権を除いてきわめて短期であり、その結果として政策遂行力も弱く、何も決められないという評判が世界に定着していた。政策の是非はともかく、長期で強い政権が国にとって必ずしも悪いとは思われないのだ。