「2+1」の曖昧な民主主義のススメ
日本は日本の道を行くしかない
実はこれに近い与党内の派閥バランスが、独裁的にも不安定にもならないシステムとしてそれなりに機能してきたのだが、時代の変革に対応できないという理由で、小選挙区制によって民意をハッキリさせ、内閣人事局によって強い政権をつくろうとしたのである。 今さら元に戻すわけにもいかないし、それなりのメリットもあるのだろう。 だが今の制度を少し変更することは考えてもいいのではないか。具体的な制度設計はプロに任せるとして、派閥を政策集団としてのみ認め、政党助成金を配布することを制度化するのは不可能だろうか。田中秀征氏のいうように保守政党内に二つの潮流があるなら、その政策集団が民意を汲み上げる機関となる可能性がある。 曖昧な中途半端な提案だという批判もあるだろう。またいきなりは政権交代しにくい、民意がそのままには政治に反映されにくい制度でもあるから、民主主義としては後退だといわれるかもしれない。 しかしプチ政権交代が、曖昧ながらも民意を反映し、本格的政権交代や政界再編にもつながる契機となることができれば、現実として政治は民主的なものになるのではないか。 実は民意とは曖昧なものである。そして潜在的なものである。しかも流動するものである。振り子のように揺れ動き揺れ戻し、時に激しく先鋭化し過激化する。 過去の経験から、日本人自身がこういった過激化する民意を警戒しているのではないか。もっといえば日本人は民主主義を恐れているのではないか。少なくともフランスやアメリカのようなラジカルな民主主義を恐れているのではないか。 民主主義とは案外危険なものなのだ。 大統領制でもなく、二大政党制でもなく、多党制でもなく、曖昧な民意による曖昧な民主主義。それが、他国にはない象徴天皇制というものを有する、思想と論理より美意識と情緒を優先する文化をもつ、この国の選択であるのかもしれない。 もはや他国にモデルは見つからない。日本は日本の道を行くしかない。 五里霧中だ。この濃霧の中に活路を見出すのが政治家というものだろう。