祖母宅からの帰り道で聞こえた絶叫…赤ちゃん猫だった 21歳の長寿猫、二度脱走も帰宅「あなたは自慢の相棒だよ」
息子とも恋人とも違い、一番しっくりくる関係性は「相棒」。愛猫ボアくんへの愛しさを、そう表現する飼い主のsachi(@MoncheriSonia)さん。 【写真】虫の声に聞こえるほどの絶叫を聞いて、保護しました ボアくんは、21歳の長寿猫。腎不全や甲状腺のホルモンの過剰によって起きる「甲状腺機能亢進症」、心臓のポンプ能力が低下してしまう「拡張型心筋症」と上手く付き合いつつ、飼い主さんとの日々を謳歌しています。 ■散策の帰り道で保護した“赤ちゃん猫” 出会いは、21年前の夏。お姉さんと一緒に祖母宅を訪ね、街中を散策した帰り道、耳に飛び込んできたのは、泣き叫ぶ赤ちゃん猫の声。 「虫の声に聞こえるほどの絶叫でした。連れ帰り、一晩みんなで考えた末、遠方にある我が家へ連れ帰ることにしました」 飼い主さんは子猫の毛色やふわふわ感に、自身が持っていた襟巻に重ねたため、「ボア」と命名。帰宅後は授乳の日々となりましたが、ボアくんは就寝前にミルクを飲むと翌朝までぐっすり眠ってくれる子でした。 「目が開いたのは、我が家。だから、私はうちで生まれたと思っています。至れり尽くせりな生活の中で王様のように育ちました」 飼い主さんとの追いかけっこを楽しみ、ご飯をモリモリ食べたボアくんは生後半年で4キロに。小さな頃から、たくさんの友人に抱っこをしてもらい人馴れ訓練をしたため、訪問者が来ても堂々と構える猫になりました。 「でも、実は寂しがり屋。過去に2回ほど、寂しさによるストレスで膀胱炎になっています」 ■肝を冷やした2度の「脱走事件」 飼い主さんラブなボアくんですが、実は過去に2度脱走したことがあります。 1度目は、12歳の時。2晩外泊となったものの、自宅前にある家の庭に潜んでいたため、すぐに捕まえることができたそう。ところが16歳の頃に経験した2度目の脱走では、10日以上も発見できず。 ボアくんは、飼い主さんの実家から脱走。本ニャンにとって土地勘がない場所だったからか、発見できたのは、13日後のこと。場所は、飼い主さんの実家から500mほど離れた工場でした。 「生きた心地がしませんでした。その時、猫は脱水症状になると耳が薄くなることを知りました。助けてくださった保護団体の方々とは、今も懇意にさせて頂いています。身をもって、学んだ脱走に関する対処法を、今後はSNSでも発信したいです」 そう話す飼い主さんは4年前から、保護猫の預かりボランティアをしているそう。毎年夏に数週間、子猫を預かっています。 育猫中は、ボアくんも協力的。「子猫にご飯をやれ」と言うかのように、早朝5時頃に鳴いて飼い主さんを起こすのだとか。 「ケージ内で子猫が食べる姿を満足そうに見届けて、自分のベッドに戻ります。普段は全く子猫を寄せつけませんが、ボア爺なりに気にかけているんでしょうね」 ■愛猫の「したい」をサポートする日々 21歳の高齢猫ながら、ボアくんはこれまでトイレの失敗はナシ。高所へのジャンプは難しくなりましたが、少しの段差や階段は昇り降りできます。 腎不全のボアくんを案じ、飲み水は3カ所設置。毛づくろいをしなくなったため、ブラシやコロコロなどを使い、抜け毛ケアにも励んでいます。 「自分で引き戸の開け閉めができなくなったので、可能な限りドアマンに徹してもいます」 ボアくんが大好きなのは、リードを付けて安全に行うお散歩。飼い主さんは毎晩、散歩をおねだりされています。 「でも、過去に私がクタクタでエレベーターの中で立ったまま寝ていた時には、『今日はもう帰る』と言うかのように、途中で散歩を切り上げて、あっさり帰宅してくれました。ものすごく様子を見てるんだなと、改めて実感しました。ちなみに、仮病はバレます(笑)」 そんなボアくんに対し、飼い主さんは目を見て話す、積極的にスキンシップをすることも心がけているそう。 「食事はずっと、ウェットフードとドライフードの両方をあげています。踏ん張りが効かず、便秘になりがちなので、様子を見てシリンジでラクチュロースを与えることもあります」 ■最後まで“ボアらしい暮らし”をさせてあげたい 大きな脱走劇や子猫の預かりなど、一緒に暮らす中ではストレスを感じたこともあっただろう。それがなければ、もっと元気なお爺だったかもしれない…。 そう後悔することはあるからこそ、飼い主さんはボアくんが最期の日を迎えるまで、最大限のケアをしようと心に誓っています。 「過去に長寿猫と暮らしたことも看取ったこともないので、終末期に入ったこれからは日々、試行錯誤の暮らしになるだろうけれど、最期までストレスフリーなボアらしい生活を送らせてあげたいです」 もしかしたら、兄弟や友猫のいないボアは、“あっちの世界”でひとりぼっちになるのが寂しくて最後の力を振り絞り、ここに残ってくれているのかもしれない。そう感じることもあるという飼い主さんは、いつかやってくる別れの日を前向きに捉えようとしています。 「虹の橋を渡る日が来ても、翌日にはボアは家に戻ってきて、変わらず一緒に暮らすことになると思っています。他に行くところはないはずだし。きっと、ずっと一緒です」 兄弟が欲しかった?これまでの日々は、寂しくなかった?一番楽しかった思い出は?あなたは強くてかっこいい、自慢の相棒だよ。そんな問いと褒め言葉を伝えながら、飼い主さんは最期の日までボアくんの命と真摯に向き合っていきます。 (愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)
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