フォルクスワーゲン業績低迷が鮮明、7~9月期営業利益41・7%減…背景にドイツ国内の過剰な生産力と高い人件費
【ロンドン=中西梓】独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が30日発表した2024年7~9月期連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比41・7%減だった。販売不振と高コスト体質による業績低迷は鮮明で、VWは国内工場の閉鎖や人員削減など大規模なリストラに踏み切る考えだが、労働組合の反発で実現できるかどうかは不透明だ。
コスト2倍
アルノ・アントリッツCFO(最高財務責任者)は30日の決算記者会見で、「工場は競争力のある状態からほど遠い。現状維持はできない」と述べ、国内事業再編の必要性を強調した。
24年7~9月期の営業利益は28億5500万ユーロ(約4700億円)で営業利益率は3・6%と、米ブルームバーグ通信によると、コロナ禍の20年以来の低さだった。特に独国内で生産するVWブランドは苦戦しており、営業利益率は1・8%と、26年の目標である6・5%にほど遠い。
背景には、独国内の過剰な生産能力と高い人件費がある。英調査会社グローバルデータによると、19年に79%だった欧州域内の工場稼働率は現在69%で、独国内は55%に低下している。
人件費も重荷となっている。独自動車産業の人件費は欧州域内で最も高く、VWの独国内の生産コストは他社の2倍に上るという。
世界の販売台数も19年をピークに減少傾向で、半導体不足が緩和したため23年は盛り返したが、24年は数%減の約900万台に落ち込む見通しだ。電気自動車(EV)の伸び悩みやインフレ(物価高騰)で欧州の自動車市場が縮小していることも要因としている。
スト辞さず
このためVWは、1937年の創業以来、初の国内工場閉鎖は不可避だとしている。VW従業員で構成する労働評議会の28日の発表によると、独国内の10拠点のうち、少なくとも3工場が閉鎖となり、他工場の縮小も検討されている。
数万人の人員削減が実施される可能性もある。賃金も25年から1割カットされ、昇給も2年間停止。評議会は、インフレを考慮すると2割弱の賃下げに相当すると主張する。
VWはもともと労働組合が強く、リストラが進まなかった。工場閉鎖はコスト削減につながるが、労組側は反発し、ストライキも辞さない構えで、VWの株価は28日から下落傾向にある。米投資銀行スタイフェルのダニエル・シュワルツ氏は「大規模再編はVWの抱える問題が大きいことを意味する。本当にコスト削減できるか懐疑的な見方がある」と指摘する。