「アイドル時代に経験した『魂が揺さぶられる感覚』を感じた」北原佐和子 准看護師資格を取得し週4日介護に従事する今
1980年代からアイドル、女優として活躍してきた北原佐和子さん。現在は女優を続けながら、介護や看護の仕事をしています。芸能の世界とは違う、介護の世界に興味を持ったきっかけとは?(全2回中の2回) 【写真】「アイドルだった北原さんが!」介護施設で手拭い体操を指導する現在(全10枚)
■困っている視覚障がい者に声がかけられなかった ── 現在、女優を続けながら介護や看護のお仕事をされていますが、興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか? 北原さん:芸能界で仕事をしていた20代前半のこと。大雨の日に車に乗っていたら、両手足が麻痺している障がいのある方が近くを通ったんです。ひどい雨の中で、タクシーもなかなかつかまらず大変な思いをされていました。
そのときに自分が幼少期のときに、困っている視覚障がいのある者の方がいるのに、勇気がなくて声をかけられなかった体験を思い出したんです。あのときは子どもだったけれど「いまの自分はどうなんだろう?」と、自分に問いかけてみました。「また同じように後悔するのは嫌だ」と思って勇気を持って声をかけ、自宅までお送りしました。 その方が車中で一生懸命お話をしてくださるんです。「私はこのような体ですが、神田まで電車を乗り継いで、週に数日は働いています。1日数時間しか働けませんけど」と。家に着き、車の扉を開けたところでお手伝いしようとしたら、その方は自力で車から降りられて、ドアの外にあった金網に両手でつかまり、自分の体を支え、家の中までひとりで入っていかれました。その姿を見たときに、この方はすごいなと。自分の状況を受け入れて、自分の足で立っている、と感じたんです。
その後もダウン症のお子さんとの出会いや、障がいのある方との出会うたびに自分に何かできることはないかと思う気持ちが強くなっていきました。 ── そこから介護の資格を取られたんですか? 北原さん:30代半ばくらいから自分は今後どのように生きたいのか考えるようになりました。女優の仕事は撮影があれば忙しいですが、仕事のない空白の時間もあり、安定していません。この不安定さが若いころからイヤで、空白の時間を利用して何かできないか考えていました。