「アイドル時代に経験した『魂が揺さぶられる感覚』を感じた」北原佐和子 准看護師資格を取得し週4日介護に従事する今
たとえば、利用者の方の中には入浴サービスが目的で来たのに、「入りたくない」という方もいます。こちらはなんとか入ってもらうために、スタッフ一丸となってあの手この手を使います。以前、「今日は菖蒲湯(しょうぶゆ)ですよ」と他の利用者さんに話しかけたときに、入浴を嫌がっていた方が「菖蒲湯なの?」と興味を示してくれたことがありました。これはチャンスとばかりに私はその方との会話を盛り上げ、その間にほかのスタッフが入浴準備を進め、最終的に「じゃあ入ってみよう!」となったんです。利用者の方に「気持ちがよかった」と言ってもらえたときは、嬉しくて、嬉しくて…。
絶対ムリだと思っていたことができたことは自信につながったし、利用者の方が満足してくれたときの表情に魂を揺さぶられました。アイドル時代にチームでつくった曲をファンの方に、「この曲大好きです」と褒めてもらえたときも同じように魂を揺さぶられたのですが、その感覚に似ていますね。 人と人との関係が希薄になりつつある現代で、支え合える素敵な仕事だなと思った体験の積み重ねでこれまで続けることができたように思います。
■事業所を変わった認知症の方のその後に驚いて ── そこからずっと介護のお仕事をされているのですか? 北原さん:6年ほど同じ系列の事業所で働いていましたが、いったんそこで区切りつけることにしました。次に目指した要介護者のケアプランを作成できるケアマネージャーの資格を取るには、5年の実務経験が必要でした。それを満たしたということもありますが、人間関係で疲れたこともあり、少し距離を置きたかったんです。 ── 辞めた後はどうされたのですか?
北原さん:女優の仕事をしながら、介護福祉士やケアマネージャーの資格を取りました。その期間に介護の仕事はつらいこともあったけれど、素敵な出会いもたくさんあったことに気づきました。そのことをいつか本などで世間に伝えたいと思ったのですが、そのためには現場を離れるべきではないと思い、2014年に再び介護の仕事に戻ることにしました。 そのころには、私の認知症の方への意識は初期のころよりだいぶ変化していました。