大江麻理子さん教えて!投資にも日々の生活にも影響する「日本の利上げ、アメリカの利下げ」
「日米の金利差により為替や株価にも影響が。経済の軟着陸に向けたかじ取りが続く」
一方、アメリカのFRBは今年9月、4年半ぶりに利下げへとかじを切った。 「アメリカでは、コロナ禍で一気に景気が悪化。2020年3月に金利を下げたことなどで景気が回復しました。ただそれに伴って物価が押し上げられ急激なインフレが起こり、世界中で同様のインフレが加速する中、FRBは2022年3月に利上げを実施。ところがなかなか収まらず、11回も利上げを続けることになってしまいました。2年あまりのインフレとの闘いを経て、消費や雇用などの経済指標から物価は落ち着き、景気は少し冷えそうになってきたと見て、今年9月に利下げを決断しました」 アンケートでは日本の利上げ、アメリカの利下げによる影響を懸念する声が。 「身近なところだと金利が変動することによる住宅ローンや投資、預金などへの影響がまず挙げられます。また、日本とアメリカの金利差が縮小したことによる影響としては、為替の変動が挙げられると思います。為替は複合的な要因で変動しますが、日米の金利差が縮まることは円高ドル安の一因となり得ます。金利の高い国の通貨を保有していると利子によって増えていくため、人気が集まり、その通貨が高くなっていく傾向があります。そのためにこれまでは金利の高いアメリカのドルが高く、相対的に日本の円は安くなって、円安ドル高が進行していました。その局面が変わってくる可能性があります。そうなると、これまで円安になると為替差益を得ていた輸出産業がそのメリットを受けにくくなるかもしれませんし、一方で円安により輸入コストが増すデメリットが生じていた内需型産業は、業績がよくなるかもしれません」 日銀もFRBも、絶妙に金利を調節する必要がある難しい局面に入ったと大江さん。 「アメリカでは、大統領選挙などの不確実性が高い要素がある中、FRBのパウエル議長にはインフレの抑制と景気後退のリスク管理を両立させ、アメリカ経済をソフトランディング(軟着陸)させることが求められています。日本では、日銀の植田総裁がやっと上向いてきた日本経済の体力を低下させずに10年続いた金融緩和を手じまいできるか、その手腕が問われています。今年の3月に続き7月に追加の利上げを行った直後には、あまり利上げが予想されていなかったこともあり、株価や為替が大きく変動しました。読者アンケートでは、現在投資をしている方が半数近くいらっしゃいました。実際に自分のお金を運用していると、国内外の金融政策や経済の動向がより身近に感じられるかもしれませんね」 【大江麻理子】 おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。 撮影/花村克彦〈Ajoite〉 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2024年12月号掲載