大江麻理子さん教えて!投資にも日々の生活にも影響する「日本の利上げ、アメリカの利下げ」
テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第49回目は「日本の利上げ、アメリカの利下げ」について大江さんと一緒に深掘りします。 【写真】大江麻理子さんと考える社会問題「働く30代のニュースゼミナール」
今月のKeyword【日本の利上げ、アメリカの利下げ】
にほんのりあげ、あめりかのりさげ▶利上げ・利下げとは、各国の中央銀行が行う政策金利の引き上げや引き下げのこと。日銀は2024年3月に大規模な金融緩和から転換して約17年ぶりに利上げを行い、7月にも追加の利上げを実施。一方、アメリカの中央銀行にあたるFRBは2024年9月に4年半ぶりとなる利下げを行った。
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2020年3月 【アメリカの中央銀行にあたるFRBがコロナ禍による経済の混乱で政策金利をゼロ近くまで引き下げ】 連邦準備制度理事会(FRB)は、コロナ禍による経済の混乱を抑えるために政策金利を0%近くまで切り下げ、量的緩和政策を導入。2022年3月の利上げまで2年間継続した 2024年3月 【日銀がマイナス金利政策を含む大規模緩和策の変更を決定した。約17年ぶりに利上げを実施】 日銀は、賃金と物価の好循環が徐々に達成できてきたことを背景にマイナス金利政策を解除。長短金利操作やETFなどの買い入れの終了も決め、金融政策を転換した 2024年9月 【FRBがインフレ率の低下と労働市場の減速をふまえ約4年半ぶりに利下げに踏み切った】 FRBは、インフレ圧力が緩和されてきたことと、雇用の伸びが一段と鈍化するリスクをふまえ、0.5%の大幅な利下げを実施。今後さらなる利下げのゆくえが注目されている
各国の景気や物価上昇の事情によって、金融政策は変わってきます
「日本は金融緩和政策を転換して利上げ。アメリカは、インフレが一段落して利下げへ」
「日本の中央銀行である日銀は今年3月に長く続けた異次元の金融緩和政策を転換して利上げを行い、7月にも追加の利上げを実施しました。一方、アメリカの中央銀行にあたるFRBは今年9月に利下げに踏み切りました。長く超低金利環境が続いた日本に金利のある世界が訪れたこと、また日本の利上げとアメリカの利下げによる影響について見ていきたいと思います」と大江さん。 まず、利上げ・利下げとは何ですか。 「各国の中央銀行が行う政策金利の引き上げ・引き下げを指します。政策金利とは、景気や物価の安定を目的に中央銀行が操作し、誘導目標とする金利のことです。一般的に、景気が悪いときは政策金利を下げることで経済を温め、景気がよいときには政策金利を上げることで景気の過熱やインフレを抑制する調節機能があると言われています」 日銀は、今年3月にマイナス金利政策を解除し、政策金利を0~0・1%程度に引き上げた。日銀の利上げは約17年ぶり。 「2013年以降、日銀は当時の黒田総裁の主導で異次元の量的・質的金融緩和を続けてきました。大規模緩和により物価上昇率が安定的に2%程度になることを目指し、日本経済を活性化しようという政策です。世の中に出回るお金の量を増やすため日銀による長期国債やETF(上場投資信託)などの買い入れが行われ、金利を低位に抑えることによりお金を借りやすくし、経済の循環がよりスムーズになるよう2016年からはマイナス金利が導入されました。10年続いた金融緩和のあと、植田総裁が就任した頃には、2%以上の物価上昇がしばらく続いている状況になっていました。これにはコロナ禍やウクライナ情勢などを背景とした原材料価格の高騰、円安など複合的な要因がありましたが、そうしたコスト高による物価上昇から、賃金が上昇して購買力が高まることによる物価上昇へと徐々に変化してきて、日本経済が上向いてきたとして、今年3月についに大規模な金融緩和を手じまいする段階に入りました」