なぜ紀平梨花は逆転Vを果たすことができたのか?
フィギュアスケートの四大陸選手権の女子フリーが8日(日本時間9日)、米国のアナハイムで行われ、ショートプログラム(SP)で5位と出遅れていた紀平梨花(16、関大KFSC)が、トリプルアクセルを1本にするなどプログラム構成を急遽変えるという大胆な挑戦に成功して153.14点をマーク、トップとの5.06点差を逆転する計221.99点で優勝を果たした。 なぜ紀平の逆転優勝は生まれたのか? 元全日本2位で現在、福岡で指導をしている中庭健介氏は、そのプログラム構成を変えた咄嗟の判断力を評価した。 「勝ちにこだわりましたね。トリプルアクセルをやりたいという勢いや動機ではなく、クレバーに状況を判断、1点でも高い点数を狙うためのプログラム構成に変える冷静なコーチ陣を含めた判断力と決断力がありました。ショートプログラムを終え、トップとの約5点差はトリプルアクセル1本で埋まります。実際に素晴らしいトリプルアクセルを決めました。あの勢いであれば、あと1本跳ぶこともできたでしょう。でも、紀平さんはミスが起きて、流れを失い、プログラム全体の完成度が下がってしまうリスクを回避しました。一発目で点差を帳消しにすれば、後は自分の演技をすれば勝てると考えたのでしょう。実際、その想定通りの結果になりましたね」 冒頭のトリプルアクセルでは基礎点の8.00に出来映え点の2.51点を加えて10.51点をゲットした。SP首位だったブレイディ・テネル(21、米国)の冒頭ジャンプはダブルアクセルで、4.20点。中庭氏が指摘するように一発のジャンプだけで5.06点差を逆転してしまっていた。しかも、紀平は「6分間練習の中で(プログラムの)変更を決めた」という。 中庭氏は成功したトリプルアクセルに秘められた微調整を見逃さなかった。 紀平は、大会前に転倒して左手の薬指の第二関節を亜脱臼していたが、SPのトリプルアクセルの失敗には、少なからず、その影響が見られたという。 「ジャンプの際、空中で脇を締めて回りますが、脇を締めようとするときに手を握ります。小指から順番に握りますから薬指を怪我した場合握りにくくなります。また、スピンでバリエーション(難しい姿勢)をする際は、ブレードを持ったりと手を使います。持ち方の工夫などで演技への影響を若干出にくくできますが、ジャンプは瞬発的、かつ繊細なものですから、かなりの違和感はあったのでしょう」