<北朝鮮内部>通貨ウォンが急落 対ドルは年初の半分に 深刻な外貨不足が原因か
北朝鮮国内で中国元、米ドルの実勢交換レートの上昇が続いている。アジアプレスが実施している調査では、2024年初に1米ドルは8500ウォンだったのが9月初旬には1万7200ウォンに、10中国元は同様に1万2600ウォンだったのが、2万2000ウォンに、つまり米ドルは2倍、中国元は1.75倍も上昇した。その理由は何なのか? 北朝鮮に住む取材協力者の説明を聞いた。(石丸次郎/カン・ジウォン) ■【北朝鮮写真特集】 秘密撮影された路地裏の女性たちの姿(10枚)
◆外貨使った個人、企業は全額没収と警告
かつて露店で豆腐一丁を買うのにも中国元や米ドルで取引するするほど、北朝鮮国内で外貨使用は一般化したが、2019年頃から当局による規制が強まった。今年4月末には、社会安全省(警察庁に相当)名義で、個人も企業も外貨を使用した場合、全額没収するという強い警告が通知された。外貨を扱う両替商に対して、教化(懲役)2年が科せられたという報告も最近寄せられている。一般住民の外貨使用はすっかり萎縮してしまった。 それでも外貨が上昇し続けるの理由は何だろうか? 取材協力者の間でも意見が分かれた。咸鏡北道(ハムギョンプクト)に住む取材協力者A氏は、次のように言う。 「もう外貨を持っている住民自体があまりおらず、取引がほとんど成立しない。取り締まりも厳しくなって、両替市場自体がすっかり縮小してしまい、交換レートも意味がなくなったのと思う」 外貨の高騰は表面上のことで、取引の沈滞がレートに現れているというのがA氏の意見だ。
◆「深刻な外貨不足が高騰の原因だ」
一方、両江道(リャンガンド)の取材協力者B氏は異なる見方をする。トンチュ(金主)と呼ばれる新興富裕層と付き合いの多い商売人だ。取り締まりが厳しくなり外貨の使用や取引がひどく萎縮しているのは事実だとしながら、トンチュ同士、外貨保有者間の取引は続いているとして、「深刻な外貨不足が高騰の原因だと思う。朝鮮ウォンの価値がどんどん下がっているのだ」と述べた。 その理由についてB氏はまず、国の外貨収入が激減したまま回復していないことをあげた。かつて北朝鮮の主たる外貨稼ぎ品目は、石炭や鉄鉱石などの地下資源と水産資源だった。2017年の国連安保理による制裁強化で、これらのほとんどは輸出禁止になった。 パンデミックでほぼ止まっていた貿易が昨年8月に再開された後も、地下資源、水産資源の輸出不振は続いている。国内に外貨が入って来る見通しが立たないのだ。 「朝鮮ウォンをまったく信用していないトンチュたちは、今も外貨をなんとか手放さないようにし、逆に必死になって外貨を集めようとしている。取り締まりで外貨の流通が減ったが、むしろ朝鮮ウォンの価値はずっと下がり続けている」