「子どもは殺されるために生まれたのではない!」ガザとロンドンから〝戦争を止めて〟 「忘れない、パレスチナの子どもたちを」
遺族を説得、信頼関係を築いた
撮影は攻撃からわずか1カ月後から始まったが、亡くなった子どもたちの家族が撮影に協力してくれたのはなぜか、どう説得したのか。サウワーフ監督はジェノサイドの歴史から語り始めた。「多くの家族は75年もの間、住んでいた場所から強制移住させられている。殺人や殺戮(さつりく)を目のあたりにしてきた人たちだ。その苦しみや悲しみはしみつき、受け継がれるものになってしまった。だから、多くの人たちが『もっと声を上げたい』『自分たちのストーリーを話したい』と思うようになった」と話した。 サウワーフ監督は、撮影の前に何度も遺族の家に足を運び信頼関係を築いた。「あなたの殺された子どもの声をしっかりと残すこと、ほかの人に伝えることが大切だと説得した」。この映画は、殺された子どもたちのストーリーを語るプラットフォームになると考えた。「さらに大事なのは、ガザには(同じように亡くなった子どもが)ほかにもたくさんいることだと伝えた」。もちろん、説得できなかった例もあるが「自分の子どものことは話せなくても、写真などを提供してくれた遺族もいた」という。 現在進行中のパレスチナとイスラエルの軍事衝突は1年を過ぎたが、停戦のメドすら立っていない。「21年もひどかったが、今は比べられないほど悲惨だ。想像できないほどひどいことが起こっている。全てが(イスラエル軍の)ターゲットになり、壊されている。攻撃による死者は4万人を超え、10万人以上がけがをし、何百万人もが自宅を離れることを余儀なくされている。人口が220万人のガザで、18万6000人が亡くなったというリポートもある。住民の8~10%が死亡したということになる」
サウワーフ監督の家族も犠牲に
サウワーフ監督は現在もガザにいて、戦火の中で映画を作り続けている。「今も私たちの頭の上から爆弾が落ち、日々追われている」のが実情だ。「私がそれでもここに住み、映画を作っているのは、ガザの人たちの叫びを伝えたいからだ。ガザの人々は自分たちの悲痛な声や苦しみが、他の人に伝わっていると信じている」 「ガザには安全な場所も、シェルターもない。この衝突はガザのすべての人に害を与えている。私もその一人だ。(インタビュー中の今も)皆さんと話をしているが、いつロケット弾が飛んでくるか、空爆が始まるか分からない」 実際に、家族にも大きな犠牲が出た。「今いるのは、家族や親戚47人が殺された場所だ。昨年11月17日、爆弾で両親、兄弟2人とその妻と子どもたちが犠牲になり、私も致命的な傷を負った。兄弟の一人はこの映画を手伝い、一人は外国のメディアに関わっていた」と話した。「こうした悲劇はいたるところから聞こえてくる。知人もたくさん殺された。そうした状況でも、人々は希望を持っている。この戦争はいずれ終わると考えているのです」