「子どもは殺されるために生まれたのではない!」ガザとロンドンから〝戦争を止めて〟 「忘れない、パレスチナの子どもたちを」
「忘れない、パレスチナの子どもたちを」は2021年5月、イスラエルが11日間にわたってパレスチナ・ガザ地区で行った爆撃で殺害された、少なくとも67人の子どもたちを追悼するドキュメンタリー映画だ。当時、そのニュースを見たイギリス人のマイケル・ウィンターボトム監督が、パレスチナ人でガザに住むムハンマド・サウワーフ監督と協力して製作した。サウワーフ監督は約100時間分の映像をウィンターボトム監督に送り、ウィンターボトム監督がロンドンの編集室でマックス・リヒターの音楽などを加えて完成させた。 【写真】屈託のない笑顔を見せるパレスチナの子どもたち 「忘れない、パレスチナの子どもたちを」の一場面 インタビューは、ロンドンのウィンターボトム監督とガザのサウワーフ監督、そして筆者のいる東京をオンラインでつないで行われた。この作品を製作した思いやガザの生々しい実情などを語ってくれた。
かなわなかった夢や希望を語る親たち
映画は、サウワーフ監督が亡くなった子どもたちの家などを訪れ、母や父、兄弟や姉妹、祖父や祖母、友人らに亡くなった時の様子や思い出、どんな夢や希望を持っていたかなどを聞く形で撮影。子どもの写真や動画、家で使っていた遺品なども映し出す。子どもや家族ごとにこのパターンを繰り返す作りを選択したのはなぜだったのか。 ウィンターボトム監督は「映像を初めて見た時に心を動かされた。家族がどれほどその子を愛していたか、その気持ちを撮りたかった。私にも子どもがいる。どの国のどの家族も、同じように子どもを愛している。幸せになってほしいと願っている。遺族らの映像を繰り返すことで、感情に訴える力がより強くなればいいと考えた。マックス・リヒターの音楽も、楽曲のフレーズを淡々と繰り返している」
表情は言葉よりも雄弁に悲しみを伝える
カメラは亡くなった子どもたちの顔、遺族の表情をアップも含め何度も映し出す。現場で撮影したサウワーフ監督は「表情は時に言葉にできないものを語る。怒りや悲しみをより深く伝えることができると思った」。ガザからの報道は殺害された人数ばかりが先にたち、犠牲になった一人一人の顔が見えづらいのが実情だ。「私が言えることは、世界中の人々にガザで何が起こっているか、子どもたちがどうなっているかを知ってもらうことが大事だということだけだ。中東であれ、アメリカであれ、日本であれ、子どもたちはみな同じだ」 ウィンターボトム監督が言葉をつなぐ。「彼らがどういう生活を送っていたか、子どもにどんな愛情を感じていたか見てほしい。自分たちと同じだと気がついてほしい。もし自分たちが彼らのような状況におちいったら何ができるか、身を置き換えて考えてほしいのです」