発達専門小児科医・西村佑美先生「発達特性がある息子を最初は受け入れにくかった…」葛藤を経て、普通じゃないからこそ魅力的と愛せるようになるまで
学んで気づいた。「寄り添う」と「甘やかす」の違い
アメリカで最新の発達支援の技術を学び、それを実践している彼女からは、たくさんのことを教えてもらいました。それはもう目からウロコの連続。詳しくは拙著にまとめましたが、いちばん大きかったのは、「寄り添っているつもりが、実は甘やかしすぎていたんだ」ということ。そこから接し方を少し変えたところ、子どもが急に変わっていったんです。子どもを愛するがゆえに甘やかしてしまうことは誰にでもあるんだと気づきました。 「小児科医だから子育てが上手なんですよね」と言われることもありますが、実際は私も他のお母さんたちと同じで、悩んだり迷ったりすることばかりです。 ■小さな一言が出れば、印象は180度変わる 息子が幼稚園の面接で、園長先生の帽子に興味を持ってつい取ってしまったことがありました。そのとき、「帽子を見せてください」と言えたら、印象は全然違ったはずです。むしろ、活発で好奇心旺盛な子だとポジティブにとらえられたかもしれません。 でも、当時は言葉が追いつかず、行動で表現してしまいました。こうした小さな「一言」が言える練習をしておけば、問題児扱いされることはありません。お母さんの声かけの積み重ねで違ってくるのだと後から気づきました。 スーパーで子どもが走り回るのだって、見方を変えると、子どもが探検を楽しんでいることになります。子どもは、棚に何が並んでいるか、昨日と違うものがないかが知りたいんです。それならば、スーパーが空いている時間に行って「何があるかな?」と一緒に探検してみると、親も少しストレスが減るのではないでしょうか。 子どもの好奇心を否定するのではなく、「面白いよね、いろんなものがあるもんね」と共感することで、子どもは「ママは自分をわかってくれている」と感じます。発達特性をどう捉えるかは、私も含め、親のマインド次第なのです。 ■「面白いんじゃない? 普通じゃなくてよかった」 小学校に入る頃も、まだ会話力が追いついていなかったり、少し多動があったりした息子も、一生懸命学校に通いました。その姿を見ながら、7、8歳ぐらいになってからでしょうか。「うちの子って、面白いんじゃない? 普通じゃなくてよかった」と、ポジティブに捉えられるようになりました。それまで、ポジティブな捉え方の練習を積み重ねてきたこともよかったと思います。 小さいうちは、つい他の子と比べてしまうことってありますよね。でも、ポジティブに見る練習はできると思います。例えば、「じっと座っていられないうちの子は駄目だな」と思うのではなく、「うちの子はいろんなことを考えているから、つまらなくなったら他に興味があるところへ行くんだ」と考える。それだけで少し気持ちが楽になりませんか。