新潟発 クラフトサケを身近に ラグーン・ブリュワリー 地元スーパー向けに新ホップ酒
新潟でクラフトサケを醸造する「LAGOON BREWERY(ラグーン・ブリュワリー)」。地元産米に副原料でトマトやいちごなどをあわせたユニークなお酒をラインアップし、「感激できる、多様なおいしさ」を目指している。 同社代表はかつて老舗日本酒蔵の社長を務めた田中洋介氏。「クラフトサケをもっと知ってもらいたい」との想いから、今秋は新潟県内のスーパー向けに米とホップで仕込んだ新商品「ホップド福島潟」(720㎖、税込1980円)も発売した。 ラグーン・ブリュワリーは21年設立の新興企業だ。白鳥などが飛来する自然豊かな福島潟のほとりに酒蔵を構える。同年、輸出用に限り日本酒製造の新規免許が取得できるようになったことから、かねてより抱いていた「いつか自分がオーナーの酒蔵を創業してみたい」(田中代表)との意欲が再燃、起業するとともに「輸出用清酒製造免許」と「その他の醸造酒製造免許」を申請し取得した。
輸出限定の日本酒を醸造する一方、国内向けには「翔空」ブランドを立ち上げ、日本酒の製造技術をベースに副原料をあわせるクラフトサケ(その他の醸造酒)の製造をスタート。22年に第1弾で地元名産のトマトと米で醸した酒にバジルを添えた、その名も「SAKE マルゲリータ」を上市した。イベントなどで試飲を提供したところ、「(お酒なのに)ピザだ!」「マルゲリータだ!」と目を丸くして驚かれることも多いという。その味わいは外国人にも好評で、ピザの本場イタリアに“逆輸出”も始まった。 「HOP SAKE ほっぺ」も人気。ビールに不可欠な香り高いホップを米とともに醸したお酒で、ラベルにはかわいらしいキツネをあしらった。少し甘めの味わいは、国内のみならず海外の試飲会でも評判を呼んでいる。
24年9月、新潟県内のスーパーを中心に新商品「ホップド福島潟」(720㎖、税込1980円)を発売した。米とホップで醸し、地元の福島潟で自生している花からとったサワオグルマ花酵母を使用。新潟の食材とあわせやすいよう、淡麗辛口に近いホップ酒に仕上げた。これまで同社クラフトサケの販路は酒販店限定だったが、一般ルートへの展開は初となる。 田中代表は「将来的にクラフトサケの市場を広げていくためにも、生活者とのタッチポイントを増やしたかった。身近なスーパーの売場を通じ、より多くの方に知っていただくキッカケになれば」と期待を寄せる。
酒蔵は誇らしい仕事
もともと異業種から転身した田中代表は、日本酒蔵の魅力について「とても誇らしい仕事」と話す。 「自分たちが造ったお酒で目の前の方を感動させたり喜ばせたりすることができるし、海外に行けばリスペクトされることも少なくない。日本人として米を使った酒造りに携わることは、自然の生態系を育む田園風景の保全にも貢献できる」。これからもクラフトサケを通じて日本酒業界や地域農業の振興に一役買っていきたい考えだ。