シンガポールで日本人初の「鞭打ち刑」判決確定、執行へ…強姦事件の弁護人が語る現地「刑事司法」の実態
シンガポールで女性に性的暴行を加えたとして、強姦罪などに問われていた日本人男性の裁判で、男性が最高裁に上訴せず、禁錮17年6カ月と鞭打ち刑20回としたシンガポール高裁の判決が確定したことがわかった。 男性の弁護人をつとめた弁護士が取材に明らかにした。 執行された場合、シンガポールで初めて日本人が鞭打ち刑を受けることになる。(在シンガポール日本大使館は取材に「当館にて把握する限りにおいては初めてとなります」と回答) どんな事件だったのか。鞭打ち刑はいつ執行されるのか。シンガポール法弁護士として事件を担当した三好健洋弁護士を取材した。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)
●男性側主張「当初は同意あった」→裁判所は認めず
男性が罪に問われていたのは、2019年12月29日、シンガポールの繁華街で泥酔した状態の女子大生(20代)を自宅に連れ帰り、自室などでわいせつな行為や性的暴行を加え、その様子を撮影し、動画を友人に送った行為だ。両者に面識はなかった。 シンガポール高裁は今年7月1日、懲役17年6カ月とむち打ち20回の刑を言い渡した。 三好弁護士は、日本人唯一のシンガポール法弁護士(Advocate and solicitor)としてシンガポールで弁護士登録している。 シンガポールの法廷で民事・刑事・家事の裁判を取り扱うことができる日本人弁護士であることから、日本人が事件を起こした場合、多くのケースで三好弁護士が担当することになるという。 今回の事件も、日本大使館を通じて受任したという。事件から判決までの流れについて、三好弁護士に聞いた。
●争点は「性交の同意」の有無だった
――裁判で認められたことと、争われたことは 被告人の男性は性交したことは認めています。争点は、性交の同意の有無でしたが、裁判所は認めませんでした。 男性側は、お互いに酔っ払っている状態でシンガポールのクラブ街で女子大生と出会い、外でキスをした女子大生から、「私を家に持って帰って」などと言われたため、当初は性交の合意はあったと主張しました。 しかし、検察の起訴状ではその点は触れられず、次の場面は男性のマンションになっています。 男性はタクシーで自宅に到着後、意識のないまま女子大生に対して行為を始め、同意があったことを前提として行為を開始していたため、目を覚ました相手から拒否をされてからも、行為を続けました。 男性は動画も撮影しており、その映像には、男性が行為に及んだ様子も映っています。 継続的な合意が取れないまま行為がなされ、裁判所は出会ったときの合意を重要視していません。明らかな映像証拠もあり、合意のない性的暴行が認められました。