大手企業を退社し時給850円のアルバイトを始めた女性 そこで挫折を経験するも…「現場主義を貫く」理由とは
勇気を持って転職してきたのだから、ひと花咲かせたい!
こうして24歳で異業種に転職。1年で正社員になったが、販売の難しさに直面した。 「意外に販売って難しいなと思いました。紹介したら売れると思っていたのですが、売れなくて。ついには販売が嫌になって、バックヤードに行く機会も多くなっていた時期もありましたね。でも、せっかく勇気を持って転職してきたのに何してるんだと!冷静に見る自分もいて。“ひと花咲かせなくちゃ!!”と気持ちを奮い立たせたことを今も覚えています」 そこからは先輩後輩問わず、売れている人の真似をし、わからないことは恥を捨てて聞いた。すると、面白いくらいに売れるようになり、職位も副店長、店長と上がっていった。頑張る海藤さんの周りには応援者も増えた。 また、販売コンテストでの実績やセール初日の売り上げ最高額を叩き出すなど、販売員としてのスキルを数字で証明し、スタッフの士気の高まりを肌で感じながら、店長としてのマネジメント能力も確信したのだった。
思いがけないヘッドハンティング。環境を変え、アパレルを学び直す
仕事は順調だったが、他店舗との違いに違和感を抱いていた海藤さん。アパレル業界のセオリーを学ぶには、他の会社を知るべきなのかもしれないと感じるように。 ちょうどその頃、一本の電話が鳴る。それはヘッドハンティングだった。 愛着のあるお店を離れることに戸惑いはあったが、業界をもっと深く知りたいという気持ちが上回った。そして、ヘッドハンティングで2社目のお店へマネージャーとして転職する。 しかし、順風満帆にはいかなかった。これまでのやり方が通用しないのだ。 「前のお店では雑誌の発売日、新作の発売日には、在庫分が綺麗に売れた状態だったのですが、ここでは売れない。そしてようやく気づいたんです。これまで売れていたのはブランド力のおかげであって、認知の低いブランドは同じようにしても売れないのだと」 さらに追い討ちをかけたのが、人間関係だった。鳴り物入りでマネージャーとして入社した海藤さんは、店長たちから反感を買ったのだ。 「『私たち店長はみんなマネージャーを目指して頑張っているのに、うちのブランドをよく知らない人がいきなりマネージャーだと言われても、実際売れないじゃない!あなたは前の会社でどれだけの成果を出してきたっていうの?』と正面切って言われました。今思えば理解できるのですが、当時は悔しいし腹が立つしで大人気ない態度をとったこともありましたね。ただ、私が成果を出すには彼女たちと敵対関係にいるわけにはいかない!と思い立ち、1から学びなおそう!と考えを改めました」 海藤さんは、自分の立ち振る舞いを振り返り、反省すべきところは謝罪した。そして、店舗の声を吸い上げ、本部と掛け合い、わがままと思う意見にも耳を傾けた。そして、店長たちの意見が正しいと感じれば本部と戦った。こうして信頼を少しずつ蓄えていったのだった。 「きついことを言われても、目的があったから頑張れた。相手に謝ることができたのも“人として自分が上回るため”と言い聞かせていました」と話す。 答えは現場にあると考えていた海藤さんは、どんなときも現場を優先した。実際に地方店の店頭に立ち、ラックの高さを調整するなど、店長たちとともに試行錯誤した。スタッフの動きやVMD(商品をどう配置するか)を徹底し、売り上げ拡大に貢献した。