北海道に暮らす8割世帯が加盟。「生活協同組合コープさっぽろ」の物流ネットワークと資本主義の先をいく考え方
資本家のためではない、あくまで生活者のための事業体
コープさっぽろには誰もが一口1000円から出資ができ、出資すると組合員になりコープのサービスを利用できる。 「コープさっぽろでも、もっと組合員さんに還元しようということで、10万円以上出資してくださっている方には、0.5%の500ポイント分だけポイントでお返しすることを8年前に決めました。するとまた毎年出資金が30億円ずつ増えて、この8年で出資金は200億円を越えました。1000万円以上出資している方が約1000人はいます」
それだけ潤沢に資金があるため、大規模の投資もできる。SDGsを意識した環境活動も積極的に行ってきた。 洞爺湖サミットを機に設立されたエコセンターでは、組合員から回収されるトレーや紙などのリサイクル品を365日24時間体制で受け入れ、リサイクル用の原料に加工する。白いトレーはここで溶かして別の再生施設へ送られる。黒いトレーはペレットにして、バイオ燃料に。チラシや段ボールなどの紙類は圧縮され、再び再生紙になる原料として送られる。 こうして得た利益が、「ファーストチャイルドボックス」や「えほんがトドック」などの子育て支援に使われる。
エコセンターの横に設置された環境教育用の施設。小学生の受け入れなども行っている。
これまで「人と食をつなぐ」「人と人をつなぐ」を掲げて、食のインフラを築いてきたが、この二つに新たに「人と未来をつなぐ」を加える。 「北海道の未来といっても、決して明るい未来ではありません。北海道は課題先進地といえるほど課題だらけでそれを解決する事業を我々がやっていく。それが、未来をつなぐことなんだと考えています」(大見理事長) 「人と人」「人と食」をつなぐ事業がほぼ実現できつつあるいま、これからは、食品加工など産業面に力を入れていくという。いま、商圏は関東が中心なので工場なども北関東に移転するケースが多く、北海道はいつまでたっても原料、農水産物の供給地にとどまり、経済的に豊かにならない。 そこで、コープさっぽろで食品、加工品の工場をつくり、付加価値をつけて売る。自社にいくつもの売り先をもつため強い競争力がある。 課題だらけという点では北海道に限らず、少子高齢化の進む日本各地、同じような地域が多い。 資本家のためではない、あくまで生活者のための事業体として、ビジネスと社会貢献の両輪をまわしていくこと。 「生協」ができることの大きさを改めて感じた。 ●取材協力 生活協同組合コープさっぽろ
甲斐かおり
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